介護職員の離職防止に、人間関係を改善する6つの方策

介護業界において人手不足はどこでも悩みの種です。募集しても人が集まらないだけでなく、せっかく採用してもすぐ辞めてしまう。これではいつまでたっても必要な人員を充足できません。そこで介護職員が退職する理由を検証し、対策を考えてみました。

 

介護職員の退職理由第1位は賃金の安さではない!

介護職員の退職理由を調べたところ、1位は職場の人間関係に問題があったため(24.7%)、2位は法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(23.3%)でした。ふたつの合計が全体の48パーセントを占めていることから、世間で言われる「給与の安さ」や「業務の大変さ」よりも「人間関係」「法人の理念や方針」を理由としていることが分かります。逆に言えば、上位2つを解決することができれば、50パーセント近くの離職を防ぐことができるのではないでしょうか?

 

職場の人間関係の問題とは?

職場は仲良し集団ではありませんので、中には気の合わない者、そりの合わない者もいるでしょう。そうした感情をコントロールしながら仕事を進めて行くのが社会人としてのルールです。しかし介護職員のコミュニティは極めて狭いため、下記の理由により、我慢の限界が早く訪れるようです。

①閉鎖された環境の中での、同じ利用者、同じ職員との関わりが多い。
②夜勤などで気の合わない職員と二人きりで仕事をすることが多い。
③部署の移動が少なく、気の合わない上司や同僚と離れる機会が少ない。
④看護師と介護職員の関係性が悪い。
⑤派閥ができやすく険悪な雰囲気が生まれやすい。

 

人間関係が悪くなる原因

介護施設の介護職員は、決まったセクションで同じメンバーと働きます。関係性が円滑であれば問題ないですが、気の合わない人とのチームケアは苦痛であり、ましてや二人きりの夜勤での、ストレスは相当なものです。ほどよく移動などがあれば雰囲気も変わりますが、よほど多くの事業所を抱えていない限り、それも難しいことです。

看護師と介護職員の関係性の悪さは多くの施設が抱えている問題です。職業独占である看護師は、服薬やバイタルチェックなど介護職員の指導的立場になりやすいため、それを高圧的に感じる介護職員が多いのが原因です。また考え方の違いから派閥ができることもあります。結果として殺伐とした雰囲気に耐え切れずに退職に至るのです。

 

職場の人間関係を改善する方法

「いろいろな人がいるから社会なのだ」と正論をかざしては問題解決にはなりません。このような問題の解決には、人事権のある施設長や管理者などの施設責任者の介入が不可欠です。早急に下記の対策を取りましょう。

①介護職員の相関関係を把握する。
②派閥があればそれを解体するよう、別々のセクションに振り分ける。
③ユニットやチームには、かならずセクションをまとめる能力のあるリーダーを置く。
④半年に1回はセクションまたは部署の移動を行い、それを定例化する。
⑤主任やリーダーなどの所属長も定期的にローテーションする。
⑥看護師には、「立場上高圧的に感じられることが多い」と説明し、指示命令口調にならないよう協力を求める。

定期的な異動やローテーションは、学校の「席替え」や「クラス替え」と同じ効果を狙っています。「嫌な上司、嫌な同僚と一緒だけど、半年くらいは我慢しよう」と思うのと、「ずっとこの人たちと仕事を続けなくてはならない」という絶望感では意味合いが異なります。

 

施設責任者の言動や行動が離職を防止する

退職理由第2位の「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」については、施設責任者の言葉や振る舞いが影響しています。時間外に一生懸命行事の余興の練習をしているのに無関心だったり、精一杯頑張っているのにねぎらいの言葉がなかったり、施設責任者から見れば「そんなこと?」と思うようなことが、不満につながるのです。

「いくら利用者に優しく」「相手のことを思って行動」などの理念を掲げていても、施設のトップが冷たければ理念は嘘臭くなりますし、部下が困っているのに対応しない上司など、誰もついて行きません。気を付けなくてはならないのは、施設責任者が現場の状況を把握していなかったり、見て見ぬふりをしていると思われることです。現場の担当者に任せきりにせず、一緒に考え、常に職員一人一人に気を配ることが重要なのです。

職場の人間関係が崩壊すると、チームワークが維持できなくなるだけでなく、個々のモチベーションが下がり、サービスの質が大きく低下します。事故が起きる危険も高まり、法人の破たんを招く最悪な結果になることも。介護は100パーセント人力です。常に働きやすい人間関係を構築できる工夫を行いましょう。

 

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