そのパンフレットは大丈夫? 景品表示法違反に触れる表示とは
消費者庁は、例外規定があるにもかかわらず、有料老人ホームのパンフレットに、終身にわたって居住できるかのように表示したとして、運営会社の「HITOWAケアサービス」(東京都港区)に対し、景品表示法違反で再発防止を求める措置を命令しました。景品表示法違反とは何か。どこまでの表示であれば認められるのか。調べてみました。
消費者庁によると、HITOWAケアサービスは、2016年9月11日~2018年6月末まで、インターネットの資料請求や施設見学の際に配布するパンフレットに、「終(つい)の棲家(すみか)として暮らせる重介護度の方へのケア」などと表示していました。HITOWAケアサービスが経営する有料老人ホームは、住宅型老人ホームが主ですが、外部の介護サービスを利用することで自宅と同じように暮らし続けられるという意味合いで、「終の棲家」と表示していたと考えられます。
景品表示法とは
「景品表示法」は、正式名称を不当景品類及び不当表示防止法といい、昭和37年に施行されました。消費者庁のホームページには、「この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的 かつ合理的な選択を阻害するおそれのある 行為の制限及び禁止について定めることに より、一般消費者の利益を保護することを目的とする」とされています。
不当な顧客誘引とは
「景品表示法」は、正式名称を不当景品類及び不当表示防止法といい、昭和37年に施行されました。消費者庁のホームページには、「この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的 かつ合理的な選択を阻害するおそれのある 行為の制限及び禁止について定めることに より、一般消費者の利益を保護することを目的とする」とされています。
商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、内閣総理大臣が指定するもの(4条1項3号)として、無果汁の清涼飲料水等についての表示、商品の原産国に関する不当な表示などとともに、有料老人ホームに関する不当な表示も記載されています。
今回、消費者庁が景品表示法違反としたのは、「認知症により暴力を振るうなど通常の介護方法などでは対応が困難な場合は契約を解除する」といった重要事項説明書の例外規定でした。同社によると「過去にこうしたケースでの解約はない」とのことですが、そうした事実のある・なしに関わらず表示すること自体が、「顧客を誘引するための手段」と指摘されたようです。
景品表示法違反と気づかずに、大手企業でも同法に違反した例が多数あります。直近のニュースを集めてみました。
■イオン、特定日以外でも「その日限り」
総合スーパーのイオンが折込みチラシに、特定日以外でも「その日限り」として商品価格を表示していたことで、イオンリテールに対して景品表示法違反に基づく措置命令が出された。
■キリンシティ、使っていない材料を商品名に表示
外食チェーンを全国展開するキリンシティは、黒ビールを材料としていないにもかかわらず、「黒ビールカリー」「黒ビールカリーピザ」と表示したため、再発防止を求める措置命令が出された。
■地鶏一筋なのに、一部タイ産の鶏肉を使用
全国で「塚田農場」「「じとっこ組合」を展開するエー・ピーカンパニーは、一部でタイ産の鶏肉を使用しているにも関わらず、「地鶏一筋」など、すべての商品に地鶏を使っているかのような表示をしたとして、再発防止を求める措置命令が出された。
■無印良品、商品表示が不適切
「はっ水加工」と表示して販売したソファカバーが、はっ水加工されていなかったとして、無印良品を展開する良品計画に、景品表示法違反による再発防止を求める措置命令が出された。
事業所への指導やペナルティ
管轄行政 | 措置種類 | 違反罰則 | 事業者名の公表 |
---|---|---|---|
消費者庁 | 注意 | 罰則なし | 公表しない |
措置命令 | 罰則あり | 公表する | |
都道府県知事 | 指示 | 措置請求 | 公表することが多い |
※消費者庁は違反が疑われる場合、事業者からの聴取などを行い、必要に応じて立入検査などを行う。
罰金・罰則など
- 1. 検査などを拒否した場合、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金立入検査などを行った結果、違反の事実が認められると処置命令が発せられます。
- 2. 処置命令に従わない場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます。また、都道府県も同様に事業者への聴取を行い、必要に応じて立入検査などを行います。
- 3. 検査などを拒否した場合、50万円以下の罰金が科せられます。
- 4. 事業者からの聴取や立入検査などを行った結果、違反の事実が認められると、表示の改善などの指示を行います。
- 5. 指示に至らない場合でも、注意(文書または口頭)を行います。
- 6. 事業者が都道府県からの指示に従わない場合の罰則規定はありませんが、その場合は、内閣総理大臣への措置請求が規定されているので、消費者庁に対して措置命令を行うよう請求することになります。
気が付かなかったでは済まされません
「終の棲家」とは、文字通り「終身棲み続けることができる」という意味であり、もっぱら特別養護老人ホーム(以下特養)や養護老人ホームなどの、永住型施設に対して使われてきましたが、今回のように、重要事項説明書等に退所要件が記載されている場合や、介護度の改善により利用できなくなる場合、景品表示法違反に触法することが考えられます。
もう一度パンフレットやホームページなどを見直し、コンプライアンスに沿った内容であることを確認することをお勧めいたします。