福祉用具貸与の変更について(平成30年10月実施 福祉用具業者必見)
介護保険の福祉用具は要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であり、利用者が居宅において自立した日常生活を営むことができることを目的に保険給付の対象とされています。しかし「適切な福祉用具が選定されていない」「不当な高値をつける悪質な事業者がいる」など、業者のモラルが問われたり、価格の可視化が行われていないことによるトラブルが後を絶ちませんでした。
厚生労働省は、これらの批判を踏まえて商品ごとの全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定を行いました。平成30年10月から福祉用具貸与について、福祉用具専門相談員に対して、商品の特徴や貸与価格、当該商品の全国平均貸与価格を説明することや、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示することが義務づけられています。
福井県国民保健連合会に寄せられたトラブル事例
相談内容 | ポータブルトイレ(13 万円)を購入したが、便座が自分の体格よりも小さいため、いつも尿をこぼしてしまい困っている。体格に合うものに取り替えるよう事業所に頼んだが、「一度使用した商品の交換や返品には応じられません」と一方的に断られてしまった。体格に合わないものを売りつけておきながら、交換に応じないのはおかしいのではないか。 |
対 応 | 保険者がケアマネジャーと共に状況確認のため訪問し、利用者の体格と比較して便座が著しく小さいことを確認した。福祉用具を購入する際は、専門家がアドバイスをするのが当然であり、利用者の体格等を考慮しないで高額な商品を購入させた事業所側の責任が大きいため、保険者より事業所に対して指導を行った。 |
出典:http://www.fukui-kokuhoren.or.jp/kaigo-kujou-qa.html
東京都国民保健連合会に寄せられたトラブル事例
相談内容 | 福祉用具貸与サービスで電動車いす、電動ベッドをレンタルしている。電動車いすのバッテリーが古く、交換をお願いしたが迅速に対応してくれなかった。また、ベッドマットも端がへたっているものを持ってきた。このような対応をする事業所にペナルティはないのか。 |
対 応 | 実地指導について説明し、事業所へ指導出来ることについて説明した。 |
出典:http://www.tokyo-kokuhoren.or.jp/nursing_office/statistical_material/white_paper/list_heisei27/
給付制度の概要
① 貸与の原則利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供できるよう、貸与を原則としている。
② 販売種目(原則年間10万円を限度)貸与になじまない性質のもの(他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が伴うもの、使用によってもとの形態・品質が変化し、再利用できないもの)は、福祉用具の購入費を保険給付の対象としている。
③ 現に要した費用福祉用具の貸与及び購入は、市場の価格競争を通じて適切な価格による給付が行われるよう、保険給付における公定価格を定めず、現に要した費用の額により保険給付する仕組みとしている。
対象種目
福祉用具貸与<原則> | 福祉用具販売<例外> |
・ 車いす(付属品含む) ・ 特殊寝台(付属品含む) ・ 床ずれ防止用具 ・ 体位変換器 ・ 手すり ・ スロープ ・ 歩行器 ・ 歩行補助つえ ・ 認知症老人徘徊感知機器 ・ 移動用リフト(つり具の部分を除く) ・ 自動排泄処理装置 |
・ 腰掛便座 ・ 自動排泄処理装置の交換可能部 ・ 入浴補助用具(入浴用いす、 浴槽用手すり、浴槽内いす、 入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト) ・ 簡易浴槽 ・ 移動用リフトのつり具の部分 |
平成30年10月以降の変更点
■ 福祉用具貸与は以下の取扱いとなります。
① 上限設定は商品ごとに行うものとし、「全国平均貸与価格+1標準偏差(1SD)」を上限とします。
② 平成31年度以降は新商品についても、3ヶ月に1度の頻度で同様の取扱いとします。
③ 公表された全国平均貸与価格や設定された貸与価格の上限については、平成31年度以降も概ね1年に1度の頻 度で見直しが行われます。
④ 全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定を行うに当たっては、月平均100件以上の貸与件数がある商品について適用。 なお上記については、施行後の実態も踏まえつつ、実施していくこととします。
■ 利用者が適切な福祉用具を選択する観点から運営基準を改正し、福祉用具専門相談員に対して、以下の事項を義務づけます。
① 貸与しようとする商品の特徴や貸与価格に加え、当該商品の全国平均貸与価格を利用者に説明することが必要です。
② 機能や価格帯の異なる複数の商品を利用者に提示しなくてはなりません。
③ 利用者に交付する福祉用具貸与計画書をケアマネジャーにも交付します。
平成 30 年10 月以降の留意事項
■ 福祉用具専門相談員による全国平均貸与価格の説明について
商品ごとの全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の掲載先について商品ごとの全国平均貸与価格及び貸与価格の上限については、厚生労働省のホームページに掲載されていますので確認してください。なおアイテム数は増減することがあります。
全国平均貸与価格及び貸与価格の上限(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html
※2018年9月19日現在のアイテム数は2,807種類あります。
※貸与件数が月平均 100 件未満の商品は除かれています。
福祉用具専門相談員においては、貸与しようとする商品の特徴や貸与価格に加え、当該商品の全国平均貸与価格を利用者に説明しなくてはなりません。利用者への説明に当たっては、上記「全国平均貸与価格及び貸与価格の上限」により公表された全国平均貸与価格を活用してください。
■ 介護給付費請求について
介護給付費請求について 平成30 年10月の貸与分以降、福祉用具貸与事業者においては、商品ごとの貸与価格の上限を超えて貸与を行った場合、福祉用具貸与費は算定されないので注意してください。なお、貸与価格の上限が設定された商品について、例えば福祉用具届出コードを有する商品がTAISコードを取得する等、商品コードに変更が生じることもあり得ます。商品コードの変更後においても、当該商品の上限は適用されますので注意してください。
商品コードの介護給付費明細書の記載について 福祉用具貸与事業者が介護給付費請求を行うに当たっては公表された商品コードを確認の上、介護給付費明細書に該当する商品コードを記載します。なお、実際に貸与する月に付与・公表されている商品コードが介護給付費明 細書に記載されていない場合、各国民健康保険団体連合会の審査において返戻となりますので注意するとともに、誤りなく正確に記載してください。
(注)商品コードの変更が生じた商品について
当月(新たに商品コードが付与・公表された月)の介護給付費明細書には変更前の商品コードを記載し、新たに付与・公表された商品コードは翌月の介護給付費明細書から記載してください。(例えば、従来届出コードが付与されていた商品について、平成30 年11 月1日にTAISコー ドが付与された場合は、平成30 年11 月(10 月貸与分)の介護給付費明細書には届出 コードを記載し、平成30 年12 月(11 月貸与分)以降の介護給付費明細書にはTAISコードを記載します)。 また、「月遅れ分」として請求する場合は、実際に貸与した月に付与・公表されていた商品コードを介護給付費明細書に記載してください。
※出典:厚生労働省発表各種資料
・平成 30 年度以降の福祉用具貸与に係る 商品コードの付与・公表について
・福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表について
全国平均貸与価格及び貸与価格の上限公表に関するQ&A
今回の改正について公益財団法人テクノエイド協会からQ&Aが公表されています。十分に確認のうえ、対応にあたってください。
項 目 | Q:質問 | A:回答 |
貸与価格の上限適用 | 全国平均貸与価格及び貸与価格の上限は、消費税込みの価格ですか。 | 全国平均貸与価格及び貸与価格の上限は、消費税込みの価格です。例えば、消費税分も含めて、公表されている上限を超えて貸与を行った場合、福祉用具貸与費は一律算定されませんので、ご留意ください。 |
貸与価格の上限適用 | TAISコード(届出コード)を取得している商品ですが、7月に公表された「福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限一覧 (平成30年10月)」に掲載されていません。平成30年10月からの貸与においては、どのように取り扱えばよいですか。 | 全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表に当たっては、貸与件数が月平均100件以上の商品が適用され、一覧には該当する商品が掲載されています。TAISコード又は届出コードを取得している商品であって、一覧に掲載されていない商品については、従前どおりの取扱いで差し支えありません。 |
貸与価格の上限適用 | 貸与価格の上限と同額での請求はできますか。(例えば、貸与価格の上限が1,000円であるとき、100単位で請求することができますか。) | 貸与価格の上限と同額での請求はできます。 |
貸与価格の上限適用 | 貸与価格の上限を超えた貸与を行った場合、上限価格の介護給付費までが算定されるのですか。(例えば、貸与価格の上限が1,000円であり、110単位で請求した場合に100単位分が算定されるのですか。) | 貸与価格の上限を超えて貸与を行った場合、福祉用具貸与費は一 律算定されませんので、ご留意ください。 |
貸与価格の上限適用 | 平成30年9月以前に貸与を開始した利用者についても、平成30年 10月貸与分から、貸与価格の上限は適用されますか。 | 全ての利用者に適用されます。 |
貸与価格の上限適用 | 全国平均貸与価格及び貸与価格の上限を算定するにあたり、半月 請求や日割り請求分も含まれていますか。 | 半月請求や日割り請求分は含まれていません。 |
コードの取扱い | TAISコード又は届出コードの一覧は、公益財団法人テクノエイド協会のホームページで毎月公表されますが、毎月確認する必要がありますか。 | 新たにTAISコード又は届出コードを取得する商品が一覧に追加されるほか、届出コードからTAISコードに変更になる商品などもあり得るため、毎月確認する必要があります。正しくコードを記載いただかない場合は、国保連での審査において返戻となりますので、ご留意ください。 |
※公益財団法人テクノエイド協会HPより引用
http://www.techno-aids.or.jp/tekisei/pdf/qa20180907.pdf