初任給引上げに対応できる賃金体系をつくろう

若手中心のベア

初任給の上昇が続いています。産労総合研究所の「2019年度 決定初任給調査」の結果があります。1部・2部上場企業を中心とした調査ですが、これによれば、2019年4月入社者の初任給を引き上げた企業は50.6%となり、前年度の40.8%から9.8ポイントもの増加となりました。1998年以来、20年ぶりに「引き上げた」が「据え置いた」を上回っています。大学卒(事務・技術)は 208,826円(+1,421円) となっています。

オーナー中堅・中小企業も初任給を上げるニーズが益々高まっています。特に新卒採用や第二新卒採用を実施している会社は必須だといえます。力のある中堅・中小企業は昨今こぞって新卒者に対して、「奨学金返済手当」「若年者住宅手当」などを打ち出しているのはその一環です。

初任給が月額19万円であったとします。中小企業であっても月額20万円(残業代は別)にはもっていきたい。全社員に一律1万円のベースアップをするとコスト高になります。ですから、若手中心のベアを実施するほかありません。たとえば以下のような感じです。

 

22歳    10,000円

23歳  9,000円

24歳  8,000円

25歳  7,000円

26歳  6,000円

27歳   5,000円

28歳 4,000円

29歳 3,000円

30歳 2,000円

31歳 1,000円

 

10年後、訪れる日本の雇用社会

政府が考えているのは欧米のような雇用社会です。ジョブディスクリプションで職務内容や求められる職務遂行能力を明確にして、職務やポストに人をつけて採用をする「職務給採用」です。このような職務給の社会では若手はあまり重宝されなくなります。給与が同じなら、教えなくてもよいベテランを雇用したほうがいいからです。欧州で若年者の失業者が高いのはそのためです。いま日本は過渡期なので、「若い」というだけで新卒初任給がドンドンあがっています。その初任給上昇に見合うほど若手の質が上がっているかといえば、それは反比例しています。

日本においても総額人件費管理という観点から、若年層でたとえば25万円くらいの初任給になる時代がくれば、通常のベテランでも30万円程度の格差でしかなるでしょう。教えなくてもしっかりある実務をこなせるベテランは転職も容易になり、雇用の流動化が実現します。基本給が25万円~30万円で、管理職や専門技能職につく者(ジョブディスクリプションに明記)に対して、5万・10万・20万・30万円等の「職務給」が付与されます。基本給+職務給を上手に組み合わせた賃金体系です。ご推察の通り、職務給の割合が増えれば増えるほど採用は有利になり、かつダイナミックな変化(増減額)をおこせることになります。

 

「変化」を前提とした賃金制度を!

将来的には職務給へ転換するにしても、現在は能力給・属人給であるのがいまの日本企業です。つまり、急に変更することはできません。だとするならば、徐々に変更するしかありません。毎年、少しずつ変更することを前提とした賃金システムでなければならないのです。これらかの賃金制度のキーワードは「柔軟性」です。

昔、ある有名な賃金コンサルタントが「賃金制度というものは定年を迎えるまで社員が自身で賃金を計算できるようにしなければならない」と述べているのを聞いたことがあります。これはまさに「過去の発想」であり、経営をやったことがない、経営を知らない人の発言です。

環境が変わったからといって、一度約束した制度は簡単に変えることはできません。かねてより賃金制度や退職金制度はすぐに経営環境や労働市場から乖離してしまうことが常でした。今後はそれに拍車がかかり、おそらく賃金制度を作成している”最中”に環境が変化し、「乖離」していく、そのくらい激しい変化が起こることは間違いありません。

 


[PR]中小企業のメンタル問題を見抜く不適性検査スカウター
1名500円~ 今なら3,000円分のお試しクーポンプレゼント
不適性検査スカウターを使ってみる(無料)

 

 

関連記事一覧