契約内容を変更して電気料金の値上げ分を吸収する方法(介護・店舗)

やっぱり値上げの電気代、上げ幅「9%前後」の見通し(2015年4月19日 産経新聞)

東日本大震災以降、電力会社は電気料金の値上げを実施しており、折に触れこのようなニュースや新聞報道を目にされる経営者の方も多いしょう。
ところが多くの経営者の方からは、「9%なんて生易しい。実際の電気代の値上げは、もっとえげつない」との声が聞こえてきます。
介護施設や店舗で電気代が高騰しているのには、電力各社の料金計算方法と密接な関係がありそうです。

今回は読み物というより簡易なマニュアル風に書いていますので、ブックマーク(保存)いただいて必要な時にご利用ください。

 

電気料金の計算方法

(北海道電力HPより)

ご存知のように、電気代は基本料金と使用料金の2階建てです。
使用料金は、1ヶ月の使用電力量に単価をかけたものですが、燃料費(原油やLNGなど)の調達コストが単価に反映されます。
また契約内容や会社の規模、使用電力量などにより、基本料金や単価が変わります。

前置きはこれくらいにして、新聞などで報道されている9%前後の値上げ率以上に、施設や店舗の現場で電気代が高騰している理由を解説します。

 

電気代がマスコミ報道より高い理由

★高い!と感じる理由★

 

①ニュースは家庭向け中心
②値上げ率を通算していない
③燃料費調整額の高騰が値上げに追い打ちをかけている
④省エネしても電気代が下がらない仕組み

 

 

①ニュースは家庭向け中心

電気の契約は「企業向け」と呼ばれる高圧契約と、「家庭向け」と呼ばれる低圧契約があります。ニュース報道される数字は家庭向けが中心です。

特に小規模の介護福祉施設や商店は低圧契約に該当しますが、電気代の計算は、電気を使えば使うほど単価が高くなる、ボリュームディスカウントとは真逆の不思議な仕組みです。

下図は従量電灯の使用料金単価の推移です(東京電力)
赤字部分の値上げ率を見れば、基本料金は消費増税分の約3%、あまり電気を使わない一般家庭(1段目)なら8.7%ですが、3段目(月に300kWhを超える電力使用分)は24%の単価アップです。

 

より多くの電気を使う介護施設が9%では済まない一つ目の理由です。

②値上げ率を通算していない

2つ目の理由は、「点で捉えるか、線で捉えるか」により、ずいぶんと数字に違いが生まれることです。

関西電力を例に出して、見てみましょう。
関西電力では2013年5月に家庭向けで平均9.75%の値上げを行いました。今回(2015年6月1日)の値上げ8.36%と通算すると1.0975×1.0836=1.189と、震災前と比較して約20%値上げしていることとなります。先の通り値上げ率が高い企業向けですと、通算30%なんてことも充分に考えられます。

③燃料費調整額の高騰が値上げに追い打ちをかけている

燃料調整額とは火力燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を電気料金に反映させるため、その変動に応じて毎月の電気料金を調整する仕組みです。
簡単に言えば「仕入れが上がったから、価格に転嫁させてもらいます」ということ。
原材料費の高騰を企業努力で吸収しようとする中小企業の血の滲むような努力と比べれば、ずいぶんと虫の良い話です。

それはさておき、この燃料費調整額が震災以降上昇を続けています。2012年平均が0.66円/kWhに対し2014年が2.93円/kWhです。
料金値上は新聞報道もされて世間の注目も浴びますが、燃料費調整額については勝手に電気料金の中に組み入れられてしまいます。しかもそのインパクトは大きなものです。

マンションや介護施設、店舗向けに省エネコンサルティングを展開する、株式会社ジェルコミュニケーション(東京都千代田区)によると、高齢者向けマンション(50戸)の共用部で、電気代が年間約24万円高騰しています。

 

基本料金 使用料金 燃料費調整額 電気代
2012年8月(改定前) 12,904 65,945 4,200 83,049
2014年12月(改定後) 13,273 80,551 8,940 102,764
値上額・率(月間) 369
(2.9%)
14,606
(22.1%)
4,740
(112.9%)
19,715
(23.7%)
値上額(月×12) 4,428 175,272 56,880 236,580

(東京電力の場合)

 

このマンションで項目別に値上がり率を見れば、使用料金が22%、燃料費調整額がなんと113%です。結果、約24%の電気料金高騰の約25%が燃料費調整額を原因とするものですので、無視できるものではありません。

④省エネしても電気代が下がらない仕組み

事業所側の省エネ努力が、電気料金の削減に充分に反映されないケースもあるようです。
「これだけ努力しても、たったこれだけ?」との思いが、余計に「電気代が高い!」との印象を持たせてしまうのかもしれません。
努力しているのに、なかなか電気料金が下がらない理由に、意外に思われるかもしれませんが、電力会社との契約内容による場合があります。

多くの設備を使用する事業所の場合、新設時に「負荷設備契約」で電力会社と契約を締結し、そのまま長年自動継続されているようです。
負荷設備契約とは、設備容量(モーター)の総合計Kwを
契約電力とする方法で、設備の稼働状況にかかわらず基本料金が決定しますので、自ずと基本料金が高くなります。
つまり節電による使用料金の削減効果が、基本料金の値上げに吸収されるため、あまり安くならないとの実感を生んでしまいます。

省エネと併せて、最大限に電気代削減効果を生み出す契約内容の見直しも重要なことです。
新聞報道より介護事業所や店舗の電気代はなぜ高くなるのか、その原因をつかむことは出来ましたでしょうか?

続いて、事業所経営に大きなダメージを与える、今回の電気料金の大幅値上げに対抗しうるステップの電気代削減策についてお知らせします。

ご紹介する削減手法は、低圧契約(小規模な介護事業所や店舗)を対象としていますので、高圧契約(大規模工場や大型店舗、ホテルなど)は、別の手法となります。
高圧向けには、経営会議ドットコムでも様々な手法を紹介していますので、そちらも併せてご覧ください。

 

ステップ1)契約プランの変更

前にも書いたように、事業所の低圧契約内容は、負荷設備契約となっている事が多いようです。この負荷設備契約を主開閉器契約へ、変更を検討しましょう。

負荷設備契約とは、施設で使う設備の電力使用量の単純合計により基本料金が決まります。
「御社では、これだけの電気を使う可能性があるから、この契約にしておきましょう」ということですが、ちょっと現実的ではないように思いませんか。
例えば、全ての部屋の照明を付け、複数の電子レンジを同時に使い、エレベーターが常に稼働しているようなイメージ、そんな事は実際にはあり得ないですね。
経営者の知らないうちに、そんな契約を交わし、しかもそれが自動更新され続けているかチェックが必要です。

一方、主開閉器契約とは、設備の合計Kwに関係なく、契約電力を決める方法です。
「1日に最大これだけの電気を使います。だからこの契約にしましょう」との内容です。たいていの事業所の場合、負荷設備契約と比べて契約電力が下がり削減効果が期待されます。

ただし、単純に契約内容を変更するだけでは、その効果は限定的です。
主開閉器契約のメリットを最大限に活かすには、契約電力をいかに下げるかがポイント。そのための強力な武器が電子ブレーカーです。

 

ステップ2)電子ブレーカーの導入

電子ブレーカーは「簡単には落ちない」のが特長です。
一般的に、ブレーカーには一定の時間・使用量なら、契約電力を超えても落ちない許容範囲があります。
従来の熱伝導式ブレーカーは、その許容範囲以上に電流が流れると、電流を遮断して設備や配線などを保護する機能をもっています。(いわゆるブレーカーが落ちるというものです)
どれだけの電流が流れたら、何分何秒以内に遮断させなければならないという基準がJIS規格により決められているのです。

一方、電子ブレーカーは電流値をデジタル数値で感知します。ブレーカーの動作をコンピューター制御し、JIS規格の許容範囲最大まで使用できるようにプログラミングされていますので、規定時間以内であればブレーカーが落ちないようにすることができます。
許容範囲ぎりぎりまで電力が使えることで、契約アンペアの引き下げが可能となります。
つまり主開閉器契約に契約変更した上で、電子ブレーカー導入により契約電力をギリギリまで下げ、電気基本料金を削減します。

コンビニエンスストアのサークルKサンクスでは、東京電力管内で営業する約1200店に電子ブレーカーを導入、電気代の削減に取り組んでいます。従来100アンペアか125アンペアで契約していたものを、電子ブレーカーを活かして70アンペアや80アンペアと契約アンペアを30%下げることに成功しました。その結果、年間7万から12万円程度の電気代削減が実現しています。

事業所向け省エネコンサルティングの株式会社ジェルコミュニケーション(東京都千代田区)によると、24時間営業で電力利用の変動が少ないコンビニエンスストアと比べ、介護施設や店舗では更に削減効果が出ると言います。
高齢者向けマンションの共用部分(エレベーター、揚水ポンプ、排水ポンプ、消火栓ポンプ)では、主開閉器契約に変更と電子ブレーカーの導入で、契約容量が39Kwから21Kwへ50%近くも下がり、それにより年間25万円の電気料金削減に成功した事例もあるとのことです。

株式会社ジェルコミュニケーションが提供する電子ブレーカー「ジェル・コントロール・システム」は、同社のグループ会社である株式会社ジェルシステムの製造です。
ジェルシステムは国内に4社ある電子ブレーカーメーカーの1社。海外でのOEM生産が多い中、唯一の自社工場での生産をしており、1972年の創業以来、パワーコントロール制御に特化して、着実に成長しています。

昨今、電子ブレーカーを使った詐欺まがいの省エネ話でトラブルになった話を耳にします。
詐欺まがいというのは随分と物騒な話ですが、そこまでいかないまでも、契約変更と電子ブレーカーにより成果報酬スタイルで電気代削減をうたう企業もあるようです。
一概に言えることではありませんが、成功報酬は電気料金を削減すること自体が目的となり、無理な提案が事業の安定運営を阻害することも予想されます。
単に成果を売るだけではなく、顧客の立場に立って、中期的な事業安定の観点よりアドバイスできる業者を選ぶこともポイントです。

 

今回の記事については、株式会社ジェルコミュニケーションより資料提供を受けて作成しましたが、より詳しい情報、データが知りたい事業所の場合は、下記よりダウンロードが可能です。

また電気設備の稼働状況や期待削減効果について、調査診断を無料で受けることもできますので、「当社では、いったい幾ら削減できるだろう?」と思われた事業所の方なら、問い合わせフォームから同社へ直接メールが送れますので、連絡してみて下さい。

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