今年10月実施!週20時間以上パート社会保険加入と対策

主婦パートの労務管理の改革を!

厚生労働省、日本年金機構より逐一「パートの社会保険適用拡大」の詳細が明らかになっています。平成28年10月1日から、厚生年金の被保険者が500人を超える会社は適用拡大の対象となります。(3年以内に中小企業にも適用拡大が予定されています)

対象者は上記の会社に勤務し、以下の要件をすべて満たす者です。

① 週の所定労働時間が20時間以上であること
② 雇用期間が1年以上見込まれること(1年の有期労働契約でも更新の可能性があれば見込まれると判断されます)
③ 賃金の月額が8.8万円以上であること
④ 学生でないこと

この対策に追われているのが流通業と小売業の大手~中堅企業です。

今回の改正はより具体的に言えば「主婦パートの社会保険適用拡大」問題ということです。ですから、たくさんの主婦パートを活用している業界に大きな影響があります。

従来の主婦パートは、たとえば10時~15時の1日5時間で、土日を除いた週5日勤務、時給850円として、ぎりぎり年収103万円までにおさえている、またはもう少し働ける主婦は年収130万円までにおさえて働いている、という実情がありました。これらの主婦はこれまでは、ご主人の社会保険の被扶養者となれていて、社会保険料はゼロで健康保険・年金も加入できていた人たちです。社会保険料を何も負担していなかった主婦層にメスを入れようというのが今回の改正の趣旨と考えてよいでしょう。

ほぼすべての会社で現在起こっていることは、パートタイマーの求人を出してもサッパリ応募がないことです。さらに企業が欲しい40歳前後の良質な主婦パートの応募は閑古鳥が鳴いています。

企業にとっては、社会保険適用拡大によるコストアップの問題と、主婦パートに魅力を打ち出し、人材を確保・定着・戦力化するための労務政策の抜本変更問題とが交錯した、非常に悩ましい問題となりつつあるのです。

 

主婦パートを区分する

年収103万円の壁、年収130万円の壁等の従来の古い枠組みを残したまま、社会保険適用の拡大のみを先行する政策に対して、私は疑問を感じます。しかし、パートに意向を聞くというよりも、企業側が働き方の区分を提示せざるを得ない状況に来ています。

女性はライフイベントによって、3つに区分されます。子どものいない主婦パートもおられますが、多くは正社員雇用されている現状がありますので、ここでは割愛します。

(1) 小学校に入る前の子どもがいる主婦(28歳~36歳程度)
(2) 小~大学生の子どもがいる主婦(35歳~48歳程度)
(3) こどもは既にひとり立ちしている主婦(49歳以上)

従来1日5時間×週5日勤務していた主婦パートの見直しの事例を以下にあげます。

(1) 小学校に入る前の子どもがいる主婦

終日、育児と家事が中心になるため、子どもを預けたうえで条件の合う時間で働ける仕事であることが重要です。つまり、時間給の額よりも、自分の都合で働けるための通勤利便性(勤務地の近さ、保育所との動線等)・融通の利く勤務時間です。したがって、中途半端に働くことで手取りが大幅減となる社会保険加入を避ける、こんな雇用契約が想定されます。

1日4時間30分×時給850円×5日×4.3週≒82,234円(月収)

週の所定労働時間は22.5時間と週20時間以上ですが、想定される所定賃金は8.8万円以下となり社会保険に加入する必要はありません。もちろん、育児・家事の都合で働けるときや、会社の繁忙期などは残業や休日出勤などでもっと働いてもらいます。

(2) 小~大学生の子どもがいる主婦

昼間が自分の時間もできる。一方、ダンナ(40歳以上)の定期昇給もあまり見込めせん。ボーナスもパッとしない。こうなれば、16時、17時までには帰りたいが、子ども塾代、学費の心配があるので貯金をしたいというニーズが大きくなります。もちろん、家事との両立が不可欠ですので、勤務地や時間は重要な要素となります。

1日6時間×時給900円×5日×4.3週=116,100円(月収)

1日7時間×時給1000円×5日×4.3週=150,500円(月収)

この層は社会保険に加入することになります。あくまでパートタイマーですから、1日8時間の正社員より短時間とします。

(3) 子どもはひとり立ちしている主婦

子どもは手を離れ、自分の時間もできます。ダンナと2人でいても息がつまることがあります。第二の人生を楽しみたいというニーズがでてきます。そうなると、フルタイム勤務も可能ですし、休日や勤務地もこだわらない方もいます。女性はまだまだ元気ですし、企業にとっては非常に安定感のある存在です。

1日7時間×時給1000円×5日×4.3週=150,500円(月収)

社会保険にはもちろん加入します。上記以上の社員並みの働き方をして、もう一度、社会の中で自分を活かしたい、やりがいのある仕事をしたいという自己実現の欲求も高まる方が多い。

それに対応するために、優秀で正社員以上にやってくれるベテラン主婦は、新卒でのキャリアパスを歩む総合職型正社員と区別した限定正社員とする手もありえます。その処遇は月給制(フルタイムの1日8時間 月給18万円、賞与あり、退職金あり)などです。パートで頑張れば、社員にもなれるという「社員登用制度」は後進の「子育てママ」の励みになり、その確保・定着に有効でしょう。

 

企業はここらで割りきった政策転換を!

(1) 有能な主婦パートは限定正社員登用し、囲い込みなさい

社会保険の加入の有無もさることながら、今後、企業がぶちあたるのは優秀なパート等の確保難です。それもそのはず、昨今、女性は妊娠・出産・育児をするといっても正社員としての地位を確保したまま、産休、育休、育児短時間勤務措置により、仕事を継続することができるのです。ですから、優秀な女性社員は退職させないようにしないといけませんし、優秀な主婦パートも積極的に社員登用していくことが必要です。主婦=パート=安い労働力、という発想は今後崩れ去っていくでしょう。

(2) それでも女性を活用すると儲かる

主婦パートをはじめ、女性の労務コストは今後どんどん上昇していきます。それでも、働かない中高年のおじさんに比べてればずいぶん安い。パートをフルタイム化し、社会保険に入れることで労務コストが上昇するといってもまず年収250万円にも及びません(男性社員の半分です)。また、女性はソフト化・サービス化時代においてその生産性は男性を上回ることが多いです。でも、労務コストの上昇に耐えられない、その上昇する原資がない、というご意見を戴きます。その答えは男性の賃金改革です。

(3) 幹部や特別な専門職以外の男性・中高年の賃金は・・

安部政権が積極的に進めている非正規社員の待遇改善や同一労働同一賃金への政策は、そのマイナスの部分に触れていません。それは主として男性の正社員の定期昇給がなくなることです。日本はなぜ40歳以上の管理職でもない男性に定期昇給を実施できていたのか。

それは経済が発展していたからというのは一時期だけの話です。現在もそれが実行できているのは、ILOから差別である勧告されるほど女性や非正規従業員の賃金を抑制してきたからです。

これからは男性中高年から、女性非正規社員へ所得移転が確実に起こります。パートタイマーの社会保険適用拡大はそのプロローグです。それに対応した企業の賃金政策、人事制度の構築が対策の一丁目一番地といえます。

 

福田事務所は人事コンサルを得意とする社会保険労務士事務所です。クライアント企業様に対して、格安で、実践的で、わかりやすい人事給与制度や各種労務政策を提案しています。

ご興味ございましたら是非お問合せ下さい。


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