介護施設にISO9001の認証取得は必要か?

介護保険施行後、「介護施設は利用者に選ばれる時代」といわれるようになりましたが、最近では、待機者が多かった特別養護老人ホームにも空室が目立ち始め、これから過当競争が激化していくことが予想されます。介護施設を選択する基準はたくさんありますが、やはり「質の高いケア」が一番に求められることでしょう。

その水準を示すために、ISO9001の認証を取得する事業所を見受けますが、果たして介護施設にISO9001の取得は必要なのでしょうか。そのメリットとデメリットについて調べました。

 

ISO9001とは

聞きなれない人も多いと思いますので、最初にISO9001について説明します。ISO9001は、製品やサービスが、適切で高いクオリティが維持されているかを審査し、それをクリアした事業所に認められる国際的企画です。

日本においてISO9001認定は、「公益財団法人 日本適合性認定協会」が行っています。この団体は日本で唯一の認定機関で、日本工業規格(JIS)なども認定しています。審査は通常、認定機関の審査に適合した会社が行います。これらの会社の審査に合格した場合、「認定」ではなく、「認証」という言葉が使われます。

 

ISO9001認証までの流れ

事業所の依頼を受けて、コンサルタントなどを行う認証会社から審査員が派遣されます。認証は法人ごとではなく、事業所ごとに行いますので、特別養護老人ホームに短期入所・デイサービス・居宅介護支援センター・訪問介護ステーションなどを併設している場合は、それぞれに認証が必要です。

審査員は対象となる事業所を視察しながら、問題のある箇所をチェックします。即日または後日に報告内容が取りまとめられ、事業者への総括が行われます。トイレにオムツが見えるように保管されている場合、「収納棚を取り付けるなど、目に触れない配慮をしてください」など、社会通念上当たり前でありながら、職員が気付かない点などが改善要望として指摘されます。すぐにそれを改善することを約束し、後日認証される報告が届くという流れになっています。

 

メリット

ISO9001は監査などのように書類などを検査し、事業が適切に行われているかを調査するものではありません。業務を継続的に改善して顧客満足のための品質管理ができているかを審査し、できていない場合はどのように改善すればよいかを考えさせます。つまり、PDCAサイクル:Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことによって、サービスの質の向上を継続的に行うというわけです。

ISO9001の認証を受けることで、「常に質の高いサービスを探求し続けている」というアピールすることができますし、現場にPDCAサイクルの考えを浸透させることで、リスク管理やケアの向上が期待できるでしょう。

 

デメリット

ISO9001を継続するには、外部監査だけでなく内部監査も随時必要になります。ある施設では系列事業所が多く、内部監査のために常に人が取られていることから「監査のための監査ばかりしている」と揶揄されていました。

労力や金銭がかかる一方でISO9001の認知度は高いとはいえず、顧客に対するアピールが弱い点もデメリットとして挙げられます。2017年4月7日現在、高齢者や障害者施設などを含む福祉系の事業所で認証を受けているのは171事業所と少なく、あまり普及しているとはいえないのが現状です。

 

結論

ISO9001認証は、「日頃から適切にケアがおこなわれているか」に対して承認されるものであり、「お墨付きを得るために良いケアを目指す」のではありません。そう考えると認証を得ることよりも、「PDCAサイクルが継続して実施できるか」が判断のポイントになります。極端な話、それができていれば認証に関係なく、「優良な施設」と評判になることでしょう。

ISO9001認証ありきで内部監査や外部監査対策に時間を使うより、まずは職員に向けた研修会を開催してPDCAサイクルを徹底し、事業所のレベルがそれに達したときに、認証を受けるのも一つの考え方だと思います。無理のない計画で進めて行ってください。

 

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