日本郵便に学ぶ、これからの同一労働同一賃金対応
2018年4月6日「働き方改革関連法案」が閣議決定された(法案は2018年4月17日現在成立していない)。その中に「同一労働同一賃金の実現」という改正項目がある。➀正規と非正規の不合理な待遇差を解消、②待遇差がある場合に企業説明義務、などを設ける。中小企業は2021年4月、大企業は2020年4月施行予定だ。
平成30年2月21日大阪地裁判決では、正社員と同一職務に従事している「契約社員」にも「扶養手当」や「住居手当」等を支払うよう日本郵便に命じた。この判決は労働契約法20条が根拠。しかし、契約社員にはそこまで厳密に均等待遇を問うのかは議論の分かれるところであった。それが今後は「働き方改革関連法案」(労働契約法改正)により、フルタイムで働く契約社員にも均等待遇を認めていくこととなる。つまり、会社は契約社員の諸手当について、説明がつかない格差は、差別的取り扱い又は不合理な処遇であるとして、より厳格に認定されるおそれがある。
これは今後、労働紛争が続出することが予想される。経営者は個別社員の総支給額で考えており、基本給と諸手当の合理的構成は二の次である。しかし、今後、正社員は家族手当がある、契約社員には家族手当がない、契約社員もほぼ同じような仕事をしているのに、契約社員に家族手当がゼロはおかしい、と主張されることになる。
日本郵便は早速、グループの正社員の住居手当を一部廃止することにした。転居を伴う異動のない社員を対象に今年10月より支給額を年10%ずつ10年かけて減らすことにした。寒冷地手当なども減らす。対象社員は最大で30万円超の減収になるという。削減額はグループの半数を占める非正社員の待遇改善にあてるという。つまり、非正社員の待遇のみを上げて、正社員に合わせるのではなく、正社員の待遇を下げながら、非正社員の待遇を上げるのだ。これは多くの会社の対応方法の定石となるだろう。
中小企業には説明のつかない不合理な手当が少なからずある。2021年までに正社員の諸手当は整理統合しておく必要がある。