中部電力が初のリアルタイム「見える化」サービス
首都圏での顧客獲得にねらいも
電力小売の全面自由化を控えて、電力大手各社は、顧客取り込みのためのさまざまサービス提供合戦を繰り広げていますが、中部電力はスマートメーターを活用した電気消費量のリアルタイム見える化サービスを、他社に先駆けて実施に踏み切りました。スマートメーターは通信機能を備えた次世代電力メーターであり、電力会社の契約切り替えの際には不可欠となります。家電機器と連係することで、各機器の電気消費量を見える化し、冷暖房機器の温度調節や照明の点・消灯などを自動的に行うこともできます。また、電気の使い過ぎをメールのお知らせで案内することも可能になります。同社は、今年4月の自由化以降、首都圏でも電気の小売事業に進出する方針を打ち出しており、今回のリアルタイム見える化サービスは、首都圏での顧客獲得のための強力な武器にしたいという狙いとみられます。
スマートメーターは、現在、地域ごとに各電力会社で交換作業が進められています。従来の機械式メーターから、通信機能を持つスマートメーターへの交換であり、一部地域ではすでに交換が終わったところもあります。スマートメーターは、遠隔地の自動検針が可能になるほか、家庭や商店、事業所、オフィスなどにおける電気機器と連携することで、省エネなどのエネルギー消費の効率化を期待できます。
電気消費量の見える化サービスは、前日までの消費量の見える化サービスを実施しているところはありますが、リアルタイムでのサービスは中部電力が初めてです。今回のサービスは、家電量販店のエディオンと共同で実施します。サービスのPRや顧客の申し込み受付はエディオンが担当し、サービスそのものは中部電力が提供します。このサービスは、NTT西日本が提供するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム=家庭用エネルギー管理システム)制御装置に、スマートメーターで計測する電気使用量を連携することで、テレビ画面でリアルタイムに電気使用の状況を確認することができます。
中部電力によると、見える化サービスに必要な機器は、「カテエネHEMSパッケージ」と呼ばれる商品で、価格は8000円。エディオンの店舗で購入できます。
家庭や商店、小規模事業所などでは、パッケージを購入し、照明やエアコン、テレビ、その他の電気機器とリンクすることで、簡単にテレビ画面に、それぞれの機器の消費電力をリアルタイムで映し出すことができます。
スマートメーターの導入急ぐ電力各社
スマートメーターの導入は、全国10社の地域電力会社が、計画に沿って、機械式メーターからの交換が行われています。中部電力の場合、管内に設置されている機械式メーター約950万台のうち、昨年12月までに63.3万台(6.7%)の取替えを終えています。2022年度末までに全数の交換を終える予定です。全国でメーター数の最も多い東京電力の場合、管内2700万台のメーターのうち、昨年12月末までに375万台(13.9%)の取替えを終えています。東京電力は2020年度末までに全数の交換を終える予定です。各社遅くとも2024年度末までに交換を終える予定で作業を急いでいます。
ただ、全面自由化による電力会社の契約切り替えを希望する消費者や、HEMSなどの関連機器を導入する消費者に対しては、交換予定時期以前であっても優先的に交換を行うことにしています。
まとめ
スマートメーターは、HEMSなどとの連携により、一般家庭などにさまざまサービスを提供できる可能性を秘めています。消費電力の見える化はもちろん、省エネ、節電サービス、高齢者の見守りサービス、防犯、安全対策サービスなど、多様なサービスが提供される見通しです。電力会社は、自由化による顧客獲得の手段としてこうしたサービスを積極的にPRすると見られます。