特定技能制度が進展しない理由【進捗率はたった3.2%】

外国人労働者の受け入れ拡大に向けて4月に新設された在留資格「特定技能」の取得者が、初年度に予定していた「最大4万人」を大幅に下回る約1,500人となっていることが判明しました。介護など人手不足の業界の救世主として期待されていましたが、肩透かしを食らった格好です。特定技能が計画通りに進まない理由や、今後の展開について調べました。

 

特定技能制度とは

特定技能は人手不足が深刻な飲食や介護など14分野を対象に、外国人の単純労働を事実上認める在留資格として2019年4月に開始されました。在留資格は次の2つに分類されています。

 

・特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

・特定技能2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

・特定産業分野

介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

 

介護など人手不足の業界を担う人材と期待され、政府は制度開始から5年間で最大約34万5千人、初年度で最大4万人程度を見込んでいましたが、特定技能が認められたのは12月6日現在で1,539人(3.2%)にとどまるなど大きく停滞しています。

 

 

特定技能が停滞している理由

特定技能はいくつかの理由が絡み合うことで停滞しています。

 

・準備期間が短いため弊害が生じている

2018年10月に入管法改正案の骨子が示され、翌年4月に実施されるなど、国際的な取り組みを行うには準備期間が短すぎたため、最大の人材提供国とみられたベトナムにおいて雇用企業が払う手数料などの指針が決まっていないなどの弊害が現れています。

 

・申請や試験の遅れにより審査が進んでいない

技能と日本語の試験実施が遅れており、特定技能の資格を得られる試験が実施できたのは10月末時点で介護や外食など6分野にとどまっています。国外の試験場所はフィリピンやインドネシアなど6カ国と少なく、資格の申請は複雑で審査にも時間がかかっているため11月末までに審査を終了したのは14業種中、8業種と思うように進んでいません。

 

・技能実習生を受け入れている事業所のエゴ

これまで実質的な受け皿となっていた技能実習生は3年の実績があれば無試験で特定技能に移行が認められていることから政府は年間約9万人と言われる技能実習生の多くが特定技能に移行すると見込んでいましたが、期待どおりに移行していません。

その理由として「特定技能制度では技能実習で原則禁止されている転職が可能なため人材流失が危惧される」、「日本人と同等以上の報酬額が求められるため人件費が上昇する」など雇用先が資格変更に消極的になっていると考えられます。

 

特定技能を円滑に行うために政府は外国人材の受け入れや共生を話し合う関係閣僚会議を開き、総合対応策を改定。日本で受ける試験の受験機会の拡大や取得者を企業に仲介する制度拡充を打ち出しました。菅義偉官房長官は2019年12月20日の会議で「外国人が国を選ぶ時代だ。住んでみたい国、働いてみたい国を目指し、関係省庁が緊密に連携して取り組んでほしい」と語っています。

 

 

技能実習生関連の事件

法務省(2018年末)によると全国に約32万人が外国人技能実習生として在留しているといいますが、低賃金や長時間労働が問題化するなど待遇は十分に改善されていません。2018年には9,052人が失踪しており、諸外国から「最悪なインターンシップ」と批判されるなど、国際問題に発展しかねない問題も発生しています。

雇用主の会社が災害復旧工事中のベトナム人技能実習生2人の負傷を労働基準監督署に報告していなかったことが判明した。2人は本来の目的だった左官の技能実習が受けられなかったとも訴えている。

京都府舞鶴市の縫製業の取締役が書類送検された。従事していた外国人技能実習生5人を含む従業員6人に、1~3月の賃金約255万円と時間外労働の割増賃金約251万円を支払わず、外国人技能実習生10人を含む従業11人に違法な時間外労働をさせた疑い。

 

外国人の労働環境を本気で考えるべきだ

すべてが「ブラック企業」とは言いませんが、技能実習とは名ばかりで何も習得できず、低賃金労働だけを求められる現実に絶望している外国人技能実習生は多いと言います。日本人すら働きたがらない業種が外国人に受け入れられるわけがありません。賃金など受け入れ環境を整え、外国人労働者が働きやすい職場を提供できなければ、外国人の労働力は諸外国に流れるだけでなく、日本の信用は地に落ち、国際社会から激しいバッシングを受けることになるでしょう。


<出典>

毎日新聞:社説「増えぬ特定技能労働者 制度の矛盾が表れている」

https://mainichi.jp/articles/20191212/ddm/005/070/030000c

ライブドアニュース:「日本の“外国人技能実習制度”の問題点」

https://news.livedoor.com/article/detail/17553023/

AERA dot.:「特定技能外国人」が日本に来ないワケ

https://dot.asahi.com/wa/2019112200011.html

 

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吉田匡和

介護ライター 福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。 https://buleorca.webnode.jp/

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