飲食店にありがちな従業員とのトラブルと予防方法(1)

経営にあたり、従業員とのトラブルは出来ることならば避けたいものです。そして、トラブル防止の為には、予め起こりやすいトラブルを知っておき、その対策をしておくことが最も重要です。ここでは、飲食店においてありがちな従業員とのトラブル事例とその予防策について解説していきます。

 

退職後に未払い賃金の請求がきた!

従業員とのトラブルで最も多いのは、この未払い賃金(手当)請求ではないでしょうか。退職した従業員やその代理人から突然連絡があり、「残業代が支払われていないので、過去二年分100万円を今月中に支払って下さい。」などという連絡が届くものです。

このケースの場合、従業員が不当な請求をしてくるケースは少なく、実際に未払いが生じていることが多い様です。つまり、経営者側が支払うべきものを払っていなかった訳ですから、応じざるをえません。
また、弁護士を通しての請求や裁判になった場合には遅延損害金や付加金を上乗せして支払うことになる場合もあり、その金額は数百万円になることも少なくありません。
事業にとっては予期せぬ大痛手になってしまう訳です。

<予防策>

きちんと勤怠管理をし、時間外手当や深夜手当を支払う。

トラブルになる小規模飲食店に多いのが、「ウチは基本給は安いけど、歩合が充実しているので、頑張れば稼げる!」なんて賃金システムにしている場合です。
条件を詳しくお伺いしてみると、基本給部分が最低賃金を大幅に下回っていたり、深夜手当が全くついていなかったりします。
「頑張れば稼げる!」というシステム自体は従業員のやる気に火を点ける為には良いですが、さすがに限度があります。少なくとも最低賃金は上回る様にしておかないと、いくら歩合給を大目に払っていたとしても許されません。

また、残業代を請求された場合には、その計算基礎となる勤怠の管理をしておかないと、「きちんと働いた時間分給与を支払っている。」ことの証明が出来ません。
雇用契約書を作成することも、きちんと勤怠管理することも、事業主の義務なのです。まずは勤怠管理システムを整えて、適法な労働契約を結ぶことで、お互いに「きちんと働いている。」「きちんと給与を支払っている。」という信頼関係を築きましょう。それが労使間紛争を予防する最も効果的な方法といえます。

 

急にまとまった有給取得をされるケース

これもどちらかというと退職の際に多いトラブルです。
こういった請求に対し、「ウチは有給なんてない!」なんて反論をされるオーナーさんも未だにいらっしゃるのは事実ですが、有給がない事業所など労基法上あり得ません。
単に、従業員に取得させていない、かつ、従業員が有給があることを主張しない(出来ない)だけです。
その為に、退職の際に意を決して、「今までの分有休を使わせてもらいます。」となるのです。この従業員の主張は正しく、オーナーさんにあらがう術は基本的にありません。

<予防策>

有給についての明確な取り決めをしたり、就業規則に計画的付与について定めることで、有給についての条件を共有しておく。

有給休暇はオーナーさんが許そうが許さなかろうが、法律上当然に発生するものです。その為、予防策は「きちんと最低限度の有給休暇を与える。」ことしかありません。
また、就業規則に定め、従業員との合意がとれるのであれば、一定の日数を除き、国民の祝日やお盆、正月休みを有休消化として扱うことも可能です。また、事業の正常な運営に支障が出る場合には、有給の時期を変更することが出来る場合もあります。

どちらにしろ、有給休暇は法律上定められた日数は与えなければいけません。
勘違いされるオーナーさんは多いのですが、どんなに給与が良くでも、労働時間が短くても、「うちは条件が良いから、有給はなくても良いや。」などと考えてくれる従業員さんはいません。「有休もないなんて・・。」という不満を隠して抱え込んでいるだけです。労使間の信頼関係の構築の為にも、法律を守り、きちんと有給を取得させてあげて下さいね。

 

突然に退社されてしまう

いわゆる「バックレ」です。
アルバイトさんなどに多いですが、戦力にしていた従業員が急にいなくなるのは痛手ですよね。
法律上は二週間前に退職の申出をする必要があり、急な退職で損害が発生した場合にはその賠償請求を行う、ということも考えられます(余程の損害でない限りあまり現実的ではありませんが)。

<予防策>

退職に関する取り決め、懲戒の規定や罰則を共有する

まずは就業規則と雇用契約書に退職に関しての明確なルールを置くことが重要です。
また、無断退職に関しての懲戒の規定をおけば、それが抑止力になる可能性もあります。万が一無断退職があった場合には、取り決めた範囲の制裁を科すことも可能になります。

ただし、「無断退職だから、給料は払わない!」などという対応は決して許されるものではありませんので、実際に起こった場合には、不要な争いに発展しない様に慎重に対応しましょう。

ここまで読むと、法律上、労働者の権利はとても強く保護されていることがお分かりかと思います。雇われる側、ということで弱い立場に陥りがちな従業員を、法律は強く保護している訳です。

 

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飲食店にありがちな従業員とのトラブルと予防方法(2)

 

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