未上場会社のM&Aを活用した500億円の資産形成術
某メーカーのB社長からうかがった“すごい稼ぎ方”のお話。
B社長は食品製造業や不動産業界では有名な資産家の方です。
未上場企業約100社の大株主でありながら、東証一部上場企業のオーナーでもあるというB社長の個人資産は、現金だけでも500億円という桁違いのレベルです。保有株式や不動産も含めると、全資産はその数倍の金額にのぼります。
500億円の資産形成の大半は未上場会社の株式譲渡益
このB社長にはお抱えのM&A仲介業者が存在します。
年間に10件以上の未上場会社の売り買いを行うため、M&A仲介会社の役員がべったり担当についています。
B社長が率いる企業グループの中核企業B社は食品製造と輸入に非常に高い競争力を持っています。
M&Aを実行する際には、この「中核企業B社の強みを発揮することで買収対象の企業の業績回復が見込めるか」、そして「企業価値が高められるか」、という判断基準が非常に大きなウエイトを占めています。
B社長いわく「上場株式の取引はしない。自分の判断や努力で業績を上げられないから。未上場なら、自分の努力でいくらでも業績あげられる。自社の幹部を社長にすれば実地で力もつくし、良いことことばかりだ。」
中には業績があがりきらない会社もあるようですが、幹部社員の人材育成効果や中核企業B社の売上拡大効果を考えれば、“負け”の少ない投資なのでしょう。
未上場企業が割安で買える理由
個人的な感想ですが、未上場企業を買収する場合、“アクセス数が非常に多いメディアを持つIT企業”や“参入が難しい医療法人”、“人材確保のハードルが高い医薬品ビジネス”、“ビジネスに有効な特許を保有する企業”などを除けば、割安で購入できるケースが多くあります。
B社長の場合も、事業が立ち行かず売却に動いている企業や、後継者がおらず事業承継がネックになっている未上場企業を安く買うということに徹しておられます。
未上場企業の株式は、換金の選択肢が乏しい点やそもそも購入希望者の絶対数が極端に少ないことから、業績が芳しくないケースや事業承継を急ぐケースなどでは借金を肩代わりしてくれるなら、タダ同然でも良いという事例も少なからず存在します。
また、黒字企業であっても営業利益の3倍~5倍程度が相場になっているケースが多く上場企業の株式と比較すれば安価なケースがほとんどです。
もちろん、債務が少なく保有現金や不動産など資産が多い企業の場合はその価値が上乗せされますが、上場企業の株価が営業利益の20倍、30倍の価値をつけている事実と比較するとかなり割安です。
デューディリジェンスの過程で業績浮揚のシナリオが描ける
未上場企業に限らずですが、M&Aの場合はデューデリの過程で、各種財務諸表等を詳細に把握することができ、疑問があれば買収企業からのヒアリングも可能です。
大抵企業規模が大きい買受企業の方が、商品の仕入条件や資材・外注費用・消耗品などの購入単価が低く、すぐにコストダウン効果を見込むことができるのも大きな利点です。
また、商品と販路の組み合わせにおいても、売り手企業と買い手企業のそれぞれの経営資源をマトリクスにして考えることで、売上拡大の機会を事前に把握することも一定レベルで可能です。
B社長の場合、中核企業の商品を買収企業で販売するパターンが多いため、購入対象企業は食品スーパーマーケットなどの食品小売業や飲食店のウエイトが高くなっています。中核企業には多数の食品関係の中間流通業者との取引があり、買収の条件によっては同業の食品加工メーカーを傘下に収めるケースもあります。
業績が浮揚してくれば売却し次のM&A資金に
仮に年商20億円の企業を買収し、収支トントンの状態から1億円の営業利益に引き上げることができれば、利益額による現金などの保有資産も増えてすぐさま企業価値は3~5億円以上増加することになります。これを数十年間続けてきた結果、B社長の個人資産は数百億円に膨れ上がったのです。
中小企業の営業利益を1億円増加させるのは、簡単なことではありませんが、中核企業の存在や多数のグループ企業の存在が、そのハードルを下げています。
売却した企業の新たな買い手企業も中核企業B社の商品が業績浮揚に貢献していることもあり、グループ外に出て行ったとしても中核企業B社の売上がマイナスすることはほとんどないそうです。
なかなか高度な経営戦略であり、一定の資金力が必要ですが、費用対効果もスピードも抜群の戦略だと思います。また、表面的な印象よりもリスクが低い経営手法でありますので、より多くの実力企業がM&Aを経営戦略の選択肢の一つに加えられるようになればと願っています。
*デューディリジェンス
投資やM&A等を行う検討段階で、事前に投資対象の財政状況や法務のリスクマネジメント状況などを精査する作業のこと。 投資実行後に不測の損失やリスクが発生することを避ける目的で行われる。 その対象を接頭語として、ビジネスデューデリ、法務デューデリ、財務デューデリなどと呼ぶこともある。-exBuzzwords-