【正式発表】技能実習制度における介護職種に求める固有要件
外国人技能実習制度の対象職種に介護職種を追加することが、平成29年11月1日より決まっておりましたが、このたび(平成29年9月29日)介護職種における技能実習の要件(介護固有要件)に関する告示を、厚生労働省が公示しましたのでお知らせします。
これまで正式決定前より、各監理団体からの情報発信、先行する形での営業活動が盛んに行われておりましたが、いよいよ正式決定です。 また厚生労働省からの情報が大量、多岐にわたり、なかなか分かりにくいので、経営会議ドットコムでは、その内容をコンパクトにまとめ発信することとしました。
詳しくは、厚生労働省HPをご覧いただく事と、信頼できる監理団体に相談される事が必要です。介護職種ならではの要件もあるので、受け入れを検討する事業所は、その内容を充分に確認して下さい。
1.介護技能実習制度の対象となる業務内容
・必須業務・・・身体介護(入浴、食事、排泄等の介助等)
・関連業務・・・身体介護以外の支援(掃除、選択、調理等)、関連業務(記録、申し送り等)
・周辺業務・・・その他(お知らせなどの掲示物の管理)
2.必要なコミュニケーション能力
(介護職種固有に求める要件)
・1年目(入国時)・・・日本語能力試験のN4合格レベル
・2年目・・・日本語能力試験のN3合格レベル
N4・・・基本的な日本語の理解 N3・・・日常的な場面で使われる日本語をある程度理解 |
※N3合格というのは、かなりレベルが高く、イメージいただくために試験問題を紹介します。
<問題>___の言葉の読み方として最もよいものを1,2,3,4から1つ選びなさい 山本さんはクラスの代表に選ばれた
<問題>___に意味が最も近いものを、1,2,3,4から1つ選びなさい 次々に新しいゲームが作られる
|
送り出し国で日本語教育を受けているとはいえ、日常会話にとどまらず、「漢字や読み」まで働きながら、このレベルへ到達するのは並大抵な事ではありません。
「人を扱う」介護職には相応のコミュニケーション能力が必要との事です。
3.適切な受け入れ体制
(1)受入れ人数の上限
受け入れ可能な技能実習生は、事業所単位で常勤の介護職員の総数に応じて、設定された数を超える事ができません。
その一部を紹介します。
事業所の常勤介護職員の総数 | 一般の実習実施者 | |
---|---|---|
1号(1年目) | 全体(1・2号) | |
1 | 1 | 1 |
2 | 1 | 2 |
3~10 | 1 | 3 |
11~20 | 2 | 6 |
21~30 | 3 | 9 |
31~40 | 4 | 12 |
41~50 | 5 | 15 |
51~71 | 6 | 18 |
72~100 | 6 | 18 |
*100名以上の事業所は厚生労働相のHPで確認下さい
「技能実習1号」(1年目)とは、入国初年度に付与される在留資格で、技能の修習を行うための資格です。最長で1年間となります。「技能実習2号」(2年目、3年目)とは、技能実習1号期間中に修得した技術を習熟させる期間に付与される在留資格で、職業能力開発協会またはJITCO認定機関が実施する技能検定に合格し、JITCOが行う技能移行評価で認められなければなりません。
(2)技能実習者・実習内容の要件
・技能実習指導員のうち、1名以上は5年以上の実務経験を有する介護福祉士等であること
・技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること
・技能実習を行う事業所が開設3年以上経過していること
・入国後に、日本語講習240時間、介護導入講習42時間を行うこと 等
(3)技能実習が可能な対象施設(一部抜粋)
① 対象施設
・グループホーム
・デイサービス
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・通所リハビリテーション
・放課後等デイサービス
・児童発達支援 など
② 一部対象
・有料老人ホーム
・小規模多機能型居宅介護 など
③ 対象外
・居宅介護
・訪問介護
・サービス付き高齢者向け住宅 など
主には、訪問系サービスが今回の対象外になっています。
(4)入国後講習について
入国後講習については、日本語講習と介護導入講習がありますが、ここでは介護講習に求められている科目、時間数を紹介します。
科目 | 時間数 |
---|---|
介護の基本Ⅰ・Ⅱ(講義) | 6 |
コミュニケーション技術(講習・演習) | 6 |
移動の介護(講義・演習) | 6 |
食事の介護(講義・演習) | 6 |
排泄の介護(講義・演習) | 6 |
入浴・身体の清潔の介護(講義・演習) | 6 |
合計 | 42 |
介護福祉士養成施設の教員として、介護の領域の講義をした経験のある方、あるいは同等以上と認められる方が講師に求める要件です。
先行して行われていますEPA(経済連携協定)による外国人介護士のケースをみましても、上記の標準的なカリキュラムに限らず、日本語学習も含めて、各施設で職員による勉強会や動画等を使った補習が工夫して行われているようです。
4.日本人と同等の処遇
「外国人だから安い賃金で良い」という事では決してなく、「日本人が従事する場合の報酬と同等以上であること」が求められます。
また報酬に限らず、労働時間や休日も同等、寮や住居の確保も必要ですし、心的なケアは見知らぬ海外で働き、暮らす技能実習生ですので、日本人以上に求められるでしょう。
技能実習生は決して人件費単価の削減にはなりません。
ただし3年間の定着率が95%以上である事を考えれば、トータルでの人件費(採用費や教育費)は安価になるかもしれません。
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■外国人技能実習制度 介護施設の受入ポイント
→ 受け入れ実績1000名以上、「協同組合関西技術協力センター様」のインタビュー記事です