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【MSW回顧録】新人メディカルソーシャルワーカーが最初にやるべき横のつながりの確保

今でこそメディカルソーシャルワーカーというのは、医療機関に勤務し、そして患者さんの入退院に関してケアを行い、介護の必要な高齢者の患者様については特別養護老人ホームや介護老人保健施設への退院について支援などを行います。

しかし、この流れというのは昔からあるものではありません。つい20年ほど前まで、MSWはほとんど知られていない職業でしたし、病院は高齢者の方については長期入院を歓迎していました。その方が診療報酬も継続安定して入ってきます。しかし、このくらいの時期から、長期入院よりは患者様の回転率の向上の方に舵を切って行ったのです。

今回は、平成8年という転換期真っ最中の時期に新卒でMSWとして就職した新米MSWの回顧録、ということで、メディカルソーシャルワーカーが就職して一番最初にやるべき「横のつながりの確保」ということの重要性についてご紹介していきます。メディカルソーシャルワーカーになりたての方、そしてメディカルソーシャルワーカーを新規に仕事で部下として抱えることになった管理職の方、必見です。

 

時代の転換とともに配置され始めた MSW

メディカルソーシャルワーカー。通称、MSW。

この仕事は病院や医療機関の中で、患者さんの入退院に関する支援や、その他施設への転院・もしくは在宅復帰という名の退院に向けた様々な調整や、いわゆる「お金周り」に関する諸々を取り扱う仕事です。

時は今を20年ほど遡り、平成8年。

医療業界の大きな方針転換の波により、病院の経営判断上、高齢者は病院に長期入院をすることが難しくなりました。

簡単に言うと、様々な制度の改定などで、病院も高齢者の方に療養のような形で長期で入院していただいても収益が大きく減ってしまい、それであれば患者様の回転率を向上させた方が収益が良くなる、ということです。

要するに、これからは特別養護老人ホームや介護老人保健施設が多くの高齢者を受け入れる、つまり、そこに多くの利益が発生する、という時代の幕開けを象徴していたのです。

病院がお客様である患者様を、これまたお得意様たる「長期入院」をさせることなく、これらの施設に送り込む方針をとるということですから、それは相当な衝撃を持って当時、業界では迎えられました。

 

新米 MSW の最初の大仕事は「患者様の退院勧奨」

そんな平成8年、私は MSWとしてとある医療機関に入職しました。相方の MSW と二人同時に新卒採用で、用意された部屋には本棚と机が二つ、そして右も左も分からない状況で待ち受けていた最初のお仕事は、現在入院されている患者様にこれらの施設に移っていただくか、そもそも退院頂くためのご案内、という厳しい状況でした。

2人で「どうしていこうか」と非常に悩みました。

北海道のとある地方都市でしたが、その市にはまだどこもMSWを採用さていない状況なのでした。

それを見かねた上司(事務長)が、北海道医療ソーシャルワーカー協会(以下MSW協会)を紹介してくれました。

北海道MSW協会。

我々は存在すら知りませんでした。

ともあれまずは、入会手続きをしなければなりませんが、どこが窓口かもわかりませんでした。

今のようにネットやホームページがまだ普及されていない時期でしたので、調べようがありませんでした。

そこで考えたのが、同期のネットワーク。

同期で他の大都市に居るMSWに連絡したところ、そのMSWは協会に入会したとのことでしたので、事務局の連絡先を知ることができました。

これがまず最初の「横のつながり」の活用です。

このようにMSWは、同期のネットワークも構築しておくと安心です。

地方によっては介護福祉制度や医療関係の制度の充実度に違いがあるということもあり、異なる情報が入ってくることもあるため、何かと役立ちます。

今ではSNSなどもありますので、簡単に連絡を取ることはできるかと思います。

新米MSWの方は、とにかく同期の横の繋がりも確保しておくと、このような時に非常に役立ちますよ。

 

今の新人MSWは「頭の良い人」が多い

今はほぼすべての医療機関にMSWが配置されることになったのは、非常に喜ばしいことです。

しかし、現代の新人MSWは私たちの頃より違う意味で「頭がいい」のです。

要するに、柔軟な思考を持ち合わせていないことが大半です。

どうしても柔軟な思考というものは現場で勤務経験がなければ身に付けることができないような性質のものでもありますが、とにかく失敗することを恐れ、行動をしないと言う方が多いように見受けられます。

私が昔、社会資源を知り、仕事ができると思い込みをしている時も同じ状況でしたが、それでも先輩MSWに制度以外の大切さもいろいろ教えていただきました。

しかし、今の新人MSWは「我が道をゆく」状態で大学4年間の学習で、すべてがわかっていると勘違いしてしまっていることが多い状況です。(無論、これは彼らのせいではありませんが)

確かに学校では、先輩MSWや現場の先輩、また上司とのコミュニケーションなどについて教えてくれることも少なくなったようですし、こういった違う年代の人との関係性の構築や横のつながりの確保も、難しくなってきているのは否めません。

しかし、この我が道を行く状態では結局は、自分の仕事がやりづらくなってしまったり、一番若い子が恐れている失敗することにつながってしまいます。

そこで、新米の MSW の方は失敗を恐れず、まずは同じ職場に配置されている先輩 MSW について様々なことを教わり、時には部署の違う上司の方にアドバイスをいただきましょう。

また大きな医療機関の場合は横のつながりや情報共有も大切になりますので、出来る限り名前を覚えてもらうこと、そして新米であることを認識してもらうのが、何よりも重要です。

会社の方で紹介をしてくれるから、と甘えていてはいけません。

このあたりについては医療事故やヒヤリハットなどのインシデントにつながることもありますので、一番最初に行っておくべきでしょう。

そして新人MSWを受け入れる側も、若いMSWがこういった状況で現場に上がってくるということをしっかりと認識し、出来る限りの支援をしてあげるようにしたいところです。

また、医療機関ではなくともMSWと連携することが多々ある各施設の管理者の方や、経営者の方についても、新米MSWがこちらの担当になったと認識した時点で、忙しい日々なのは重々理解できますが少しご自身の若かった頃を思い出し、思いやりをもって接してあげるようにしましょう。

今後はますますMSWにも求められることが高度化していきますし、様々なインシデントなども発生しうる状況になりつつあります。

こういった状況からもわかるとおり、人材の育成や教育、その他新人MSWとの情報共有や連携という部分は、ますます重要なタスクとなるのです。

 

院内の情報共有や他職種連携のための教育はどうすれば良いのか?

日本医師会が作成したマニュアルに

「地域包括ケアと多職種連携のための教育プログラム」

というものがあります。

こちらは主に、医療機関や診療所、その他ケアマネージャーなど、様々な職種が連携をした職種連携というような医療ケアネットワークを構築するための教育プログラムです。

しかし包括的に少し上の次元から学習をしておくとより効率的に業務を進めることができる即戦力の MSW とすることができるのではないでしょうか。

そこで、新米 MSWにもまずはこのマニュアルを一読してもらい、その上で業務上の連携や他職種連携の重要性、さらに今回ご紹介したような「横のつながりの確保の重要さ」という部分について学習してもらう、という運用を行っている管理者や経営者の方も数多くいらっしゃいます。

またこのマニュアルをベースにして、院内独自のマニュアルを作成されている方もいらっしゃいますので、経営者の方や管理者、広く「上司」の方はもちろんのこと、新米 MSW 自身もこのマニュアルを読んでおけばある程度、業務上のイメージをつかむことができるでしょう。

マニュアルはこちら:「地域包括ケアと多職種連携のための教育プログラム」

 

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