認知症予防に良い食事・良くない食事とは?

超高齢化社会の日本では高齢者の認知症は、どの介護施設でも避けて通ることのできない深刻な問題です。認知症は一度発症すると、完全に症状をなくすことは難しく、今現在行われている治療は認知症の症状を改善するに過ぎず、その効果にも個人差があります。

認知症を完全に治す方法はありませんが、認知症の発症を遅らせたり、症状の進行を抑えたりする対策には様々なものがあります。その中でも食事による対策は介護施設でも毎日取り入れられるものです。ここでは、食事による認知症対策を詳しく解説します。

 

1. 認知症と食事の関係

認知症には様々な原因があり、日本ではアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が大部分を占めています。脳血管性認知症とは脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳にダメージが加わることで生じる認知症です。特に多いのは脳梗塞であり、脳梗塞には麻痺や言語障害が現れる重症なものもありますが、ほとんど症状のない軽症ない場合もあります。症状がないため、本人が気づかない間に何度も小さな脳梗塞を繰り返すことで、脳の広範囲にダメージが加わって最終的に認知症を発症することが多いのです。

脳梗塞などの脳血管の病気は、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病によって脳の血管が動脈硬化を起こることで引き起こされます。ですから、脳血管性認知症の予防には生活習慣病の改善がポイントとなります。

また、アルツハイマー型認知症は脳にβアミロイドと呼ばれる物質が沈着することが原因で発症します。βアミロイドが沈着するメカニズムは詳しく解明されていませんが、食事内容を改善することでβアミロイドの生成を減らしたり、排出を促すことも可能です。
このように食事の内容を改善することで、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両方を予防することができるのです。

 

2. 認知症予防によい食事

認知症予防のためには、適正な摂取カロリーで、塩分や糖分をひかえた栄養バランスのよい食事が理想です。

特に認知症予防に有効な栄養素としては、サバやマグロなどの魚に多く含まれるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸で、脳梗塞の原因となる血栓を防ぎ、高血圧や糖尿病を改善する効果が知られています。また、認知機能の改善効果があり、アルツハイマー型認知症にも効果があるとの報告もあります。DHAは脳内に多く存在する物質ですが、体内で作ることができないため、食事で取り入れるしかありません。

そして、脳の細胞にダメージを与える活性酸素を除去するポリフェノールはトマトやアボカド、オリーブオイルに多く含まれ、βアミロイドの生成を抑制する効果も知られていますから積極的に摂りたい栄養素です。ポリフェノールは熱によって変性しにくいので、炒め物にオリーブオイルを利用しても十分な効果が得られます。

その他のおススメとしては、塩分の排出を促すカリウムを多く含む海藻類や野菜、果物を多く摂ることです。海藻や野菜は低カロリーですから、カロリーのコントロールにも役立ちますし、食事の楽しみの一つでもあるデザートはカリウムが豊富な果物を取り入れるとよいでしょう。

また、季節に合った食材を多く使うのもおススメです。入所者は一日の大半を施設内の部屋で過ごしますから、季節や時間の認識が低下する傾向にあります。そのため、毎日の食事で季節に合ったメニューを出せば、時間の認識を行って脳を活性化することにもつながります。

 

3. 認知症によくない食事

認知症予防のためには、動脈硬化の原因となる食事をひかえることが大切です。特にトランス脂肪酸呼ばれる、マーガリンやショートニングなどに多く含まれる脂質は悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を大幅に進行させることがわかっています。脳梗塞だけではなく、悪玉コレステロールが多い人は心筋梗塞にもなりやすく、生命に関わる重篤な病気を合併しやすくなりますので注意が必要です。

また、塩分や糖分の多い食事も禁物です。食事は入所者にとって、毎日の生活での大きな楽しみの一つですから、味気ない食事やデザートのない食事は物足りなさを感じるかも知れません。そこで、しっかりと出汁のきいたメニューを考えたり、香辛料やシソやハーブ、ねぎなどの薬味をたっぷり使ったメニューで減塩を図るなどの工夫が大切です。デザートはカリウムを多く含む果物や比較的低カロリーの和菓子を取り入れるとよいでしょう。

 

4. まとめ

認知症予防には様々な方法が知られていますが、その中でも食事の改善は毎日継続して行うことができる予防方法であり、介護施設でも工夫して取り組むことができます。また、認知症予防として勧められる食生活は動脈硬化を改善し、認知症だけでなく、糖尿病や高脂血症などの多くの生活習慣病を予防することにつながります。

食事は外部業者に委託している施設も多いと思いますが、任せきりにせずに施設側として認知症を予防するために必要な食事の要望などをしっかり伝え、まずは食事から認知症予防を行いましょう。

 

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