【介護ビジネス独立開業の基礎知識5】リハビリテーションや訪問型の最新サービス
訪問型の介護ビジネスは将来性がある?
介護保険サービスは、長期入所から在宅介護へ移行が進んでいます。新しく事業を始めたい方にとって、在宅の利用者向けである訪問型のサービスが、もっとも参入しやすくなっています。
とくに訪問リハビリテーションと訪問介護・訪問看護は、厚生労働省の調査結果で、平成23年度以降の収益が右肩上がりの分野です。訪問型サービスには、コスト面でも「初期投資が少なめ」というメリットがあります。
その他の介護保険外サービスを開業したい事業者にとっては、在宅や訪問型に対応した新ビジネスを展開するチャンスです。
介護系リハビリテーションのサービス内容
介護ビジネスとしてのリハビリテーションには、次の3タイプが存在します。
(A) 訪問リハビリテーション
(B) 通所リハビリテーション
(C) 介護保険外リハビリテーション
(C)は主に介護予防を目的として、自費で利用されているサービスです。介護認定を受けていない人も利用できます。
(A)と(B)は介護保険サービスです。訪問リハビリは、在宅または長期入所の利者にサービスを提供します。また、通所リハビリは、デイサービスなどの施設内で利用者にサービスを提供するタイプです。
どちらも、医師の指示を受けてリハビリ計画が作成されます。実際のリハビリを担当するのは、理学療法士などの有資格者です。利用者の身体に機能訓練をほどこし、病気やケガからの回復をめざします。
訪問リハビリで提供するサービス内容には、次のような特徴があります。
(1) 指定事業者は医療機関(病院か診療所)、または介護老人保健施設
(2) 医師の診療と指示に基づき、ケアプランとリハビリ計画を作成
(3) 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がサービスを提供
(4) 急変やリハビリ中の事故リスクなど、利用者の状態に注意が必要
(5) 通常、定期的なサービス利用が見込まれる
なお、指定事業者として開業するためには、設備基準と人員基準を満たさなくてはなりません。
訪問型サービスの事業化のポイント
以前は、訪問型サービスは採算性が良くないと考えられてきました。しかし、在宅介護が推進される中で、報酬やサービス単価が高めに見直しされる傾向にあります。
訪問型は、フランチャイズでの開業が活発な業態です。これは、異業種から参入を考える事業者にとって大きなメリットです。初期投資にはロイヤリティが上乗せされますが、収益モデルが確立されているので、低リスクで開業が可能となります。
通常、訪問型では、固定の利用者に対して定期的にサービスを提供します。長期に渡って「優良顧客」を獲得しやすい面があるのです。
事業の採算性を高めるための、重要ポイントをご紹介しましょう。
【ポイント1】 近距離内に複数の利用者を確保する
近隣の利用者を集めることで移動時間を減らし、効率よくサービスを提供していく工夫が大切です。
【ポイント2】 定期的かつ長期的な利用をうながす
利用者の満足度を高め、他の介護事業者や医療機関との連携も強めていきます。定期的な利用が安定した収益に結びつきます。関連事業者などから新規の利用者を紹介されるコネクションも、事業拡大の重要な鍵となるでしょう。
ホームヘルパーが活躍中!訪問介護
ここからは、リハビリ以外の訪問型サービスについてご紹介していきます。
訪問介護は、別名をホームヘルプサービスともいいます。実際のサービスを担当するホームヘルパーは、在宅介護を支える重要な存在です。慢性的な人手不足で、人材確保が大きな課題となっています。
(1)人員基準のポイント
・訪問介護員などを常勤換算で2.5人以上
・サービス提供責任者が常勤で1人以上(利用者数40名ごとに追加1人)
・訪問介護サービスの有資格者(ホームヘルパー1級、2級、介護福祉士)
・管理者が常勤で1人必要(上の職種と兼務が可)
(2)設備基準のポイント
・事務所が必要
・事業運営に必要な広さの専用区画(部屋の一画ではなく、一室であること)
・サービス提供に必要な設備・備品が必要
(3)運営基準のポイント
・正当な理由なくサービスを拒否してはいけない
・サービス提供が難しければ、他の事業所を紹介すること
・サービス担当者会議で利用者の環境や、利用状況を把握しておく
・サービス開始にあたり、利用者にケアプランに基づくサービス内容などを説明する
・ホームヘルパーは、身分証を持参すること
・サービスの記録を取る(同居家族へのサービスは不可)
・緊急時には医師に連絡などの対応をする
ますます需要が高まる訪問看護とは?
訪問看護では、看護師が利用者の自宅を訪問してサービスを提供します。医師の指示に基づき、血圧測定や点滴、検査、投薬や医療処置などをおこないます。
訪問看護は、要介護度が高まるほど必要になるサービスです。事業としては、以下5点が重要なポイントになります。
・医師(主治医)との連携
・看護師の確保
・報酬は各種加算が可能
・容態急変などの緊急対応あり
・看護事故に対するリスク管理
サービスをおこなう事業母体は、次の2タイプがあります。
(A)訪問看護ステーションを設立
(B)医療機関(病院・診療所)による訪問看護
訪問看護ステーションの設立に必要な指定基準は、次の通りです。
(1)人員基準のポイント
・看護師、保健師、准看護師が常勤換算で2.5人以上(うち1人は常勤)
・理学療法士または作業療法士
・常勤の管理者(看護師または保健師)
(2)設備基準のポイント
・事業所が必要
・サービス提供に必要な設備・備品が必要
・訪問看護に必要な検査機器や、注射器、ガーゼなど
・看護器財や薬剤など
・必要に応じて、自転車や車などの移動手段
単価が高めな訪問入浴介護サービス
訪問入浴介護は、利用者の自宅を訪問し、入浴サービスを提供します。専用車(主にリースの入浴車)に浴槽を積んで移動し、寝たきりの人も寝たまま入浴可能です。
事業としてのポイントは次の5点です。
・採算のためには、車1台につき、1日6人以上を訪問
・入浴というデリケートな行為に配慮
・3人1組のチームで効率よく作業
・利用者の感染や風邪を予防し、健康管理につとめる
・看護師の人材確保が課題
訪問入浴介護は、他のサービスより単価が高めなのが大きな特徴です。地域内で同業者と競合したり、通所系の入浴サービスもライバルとなる可能性があり、開業には事前のリサーチが欠かせません。
(1)人員基準のポイント
・介護職員2人+看護師(または准看護師)1人の3人体制で入浴を担当
・介護職員3人での入浴も認められる場合がある(報酬は減額あり)
・3人のうち1人がサービス提供責任者をつとめる
・常勤の管理者が必要(兼務も可)
(2) 設備基準のポイント
・事務所・入浴車が必要
・サービス提供に必要な設備・備品が必要
他にもある在宅サービス:居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、ケアプランに含まれないサービスです。医師や歯科医師などが利用者と個別に契約するため、介護点数の影響を受けません。ただし、月に何回まで訪問できるか、回数に上限があります。
要介護の利用者の自宅(または居住系施設)を訪問し、以下のようなスタッフが療養指導をします。
・医師、看護師
・歯科医師、歯科衛生士
・薬剤師
・管理栄養士
サービスを提供する事業母体は、次の4タイプに限られます。
・医療機関
・歯科
・薬局
・訪問看護ステーション
地域密着型の小規模サービス
介護ビジネスは、サービスの提供場所により「訪問型(在宅)」「通所型」「施設型」の3タイプに分かれます。しかし、重度の要介護者や、治療が必要な人に対しては、訪問型と通所型のサービスを複合的に提供する方が効果的です。
こうしたニーズに合わせて登場したサービスをご紹介します。
(1) 小規模多機能型居宅介護
サービス内容は「デイサービス(通所介護)」「訪問介護」「ショートステイ」を組み合わせたもので、同じ事業所で同じスタッフが提供します。費用は月ごとの定額で、小規模かつ地域密着型のサービスです。
(2) 夜間訪問介護
コールセンターから連絡を受け、利用者の元に駆けつけて必要なケアを提供します。一定の地域内をスタッフが巡回しており、こちらも地域密着型のサービスとなっています。
医療保険サービス:訪問鍼灸と訪問マッサージ
訪問型で、潜在的に需要が大きいと考えられるのが、訪問鍼灸と訪問マッサージです。これらは医療保険でサービスを提供するため、介護認定の点数とは関係ありません。
とはいえ、ケアマネージャーや医療機関が利用をうながし、ケアプランと密接に結びついた状況で利用されているのが実状です。利用者は歩行が困難な高齢者が多く、事実上、介護ビジネスの一種とみなしてよいでしょう。
事業としてのポイントは次の通りです。
・必要資格は「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師」
・サービス提供には、医師の同意書が必要
・医療保険が適用される(制度改正・報酬改定の影響あり)
・他の訪問型と同じく、容態急変などのリスクに注意
・ケアプラン外だが、介護保険サービスとの連携も必須
生き残りを迫られる小規模なサービス
介護ビジネスには、国の社会保障費(介護保険)を財源とする側面があります。そのため、サービス報酬(単価)は、介護保険制度にコントロールされています。
3年ごとの報酬改定では、次のようなバランス調整がされることに注意しましょう。
・「儲けすぎ」のサービス分野は、報酬が下がる
・政策が推進するサービス分野は、報酬が上がる
訪問型サービスは、後者の「政策が推進する」分野に当たります。訪問介護の売上高の特徴は、次の通りです。(数値は、日本政策金融公庫総合研究所ホームページのアンケート調査による)
・事業所の半数(48.1%)は、月ごとの売上高が200万円未満
・採算が黒字の事業所は52.4%、赤字は47.6%
訪問介護は、全体の半数近くの事業所が赤字なのが実態です。とくに人員9名以下の事業所で赤字割合が高くなっています。小規模な事業所では、次のような対策を打つことで、報酬改定を味方につける必要があります。
(1) 報酬の加算を積極的に活用
(2) できるだけ報酬の高いサービスに移行
(3) 報酬単価の高い(要介護度の高い)利用者を増やす
(4) 人材確保、スタッフを増やす
(5) 小額からの設備投資を続ける