障害福祉サービスの特徴とフランチャイズ加盟のメリット・リスク
障害福祉サービスに関するフランチャイズを多く見かけるようになってきました。
この記事では、障がいとは何か、どのような事を行うサービスなのか、異業種から簡単に参入できるものなのか、事業参入を検討されている方にむけ解説しました。
代表的なフランチャイズと、その特徴も併せて紹介しています。
障害福祉サービスを利用する障がい者とは
障害者基本法では障害者の定義を、「身体障害・知的障害・精神障害があるため長期にわたり日常生活、または社会生活に相当な制限を受ける者」としています。
また一方、発達障害者支援法では、自閉症・アスペルガー症候群、学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを「発達障害」と定義、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を定めました。
国の障害福祉行政は、それぞれ障害の種類やレベルに応じて多種多様なサービスを設けており、そのうちフランチャイズ展開を行う一部サービスは、広く社会で認知されるようになっています。
障害のある方を取り巻く課題と国の政策
成人について
①雇用に関して
障害のある方は日本に964万人、そのうち労働可能人口377万人。そのうち働いている人はわずか14%です。
未就労者のうち、約24万人は福祉施設に通っていますが、月の平均収入がわずか15,600円程度で経済的に自立していくことが困難な現状です。
このような現状に対し、国は雇用政策として、障害などの理由により働くことに困難がある人を対象に、就職し働き続けていく過程を支援する就労支援制度を設けています。
具体的には、就職するために必要なスキルを身につける「就労移行支援」、働く場を提供する「就労継続支援A型・B型」をそれぞれ設け、自治体から指定を受けた事業所がサービスを提供しています。
②住まいに関して
障がいのある方の住まいの確保は、障がい者自身の高齢化が進むと、同居する家族が高齢、あるいは死去するに従い、大きな課題となっています。
このような現状に対して、国は障害のある方が、入浴や食事などの介護や生活相談、その他の日常生活上の支援を提供するサービスは「共同生活援助」(通称、障がい者グループホーム)を設け、自治体から指定を受けた事業所がサービスを提供しています。
子どもについて
③教育に関して
未就学児以上の子どもの6.5%に発達障害の可能性があると言われています。
個性が顕著な子どもたちへの画一的な教育の結果、失敗体験が積み重なり、不登校やひきこもり、精神疾患などの二次障害につながっていると言われています。
このような子供たちに対して、国は安心して通える、学びと居場所の提供を行う、「児童発達支援管(未就学児向け)」と「放課後等デイサービス(小学生以上)」をそれぞれ設け、自治体から指定を受けた事業所がサービスを提供しています。
いずれのサービス、「就労移行支援」「就労継続支援」「障がい者グループホーム」「児童発達支援」「放課後等デイサービス」は、それぞれ無料や月数千円程度の価格にてサービス利用でき、その差額は国と自治体が負担しています。
サービスを提供する事業所は、自治体からの指定を受ける必要があり、指定を受けるためには、国により定められた人員や設備、サービスの基準をクリアする必要があります。
障害福祉事業に参入するメリット
①国と自治体からの手厚いサポート
指定を受けた事業所は、国が定めた単価によりサービスが提供できます。さらに提供したサービスのうち、そのほとんど(90%程度、サービスにより違いがあります)を、利用者に代わって国と行政が負担します。その上、単価はかなり高額です。
障害福祉の分野は、よく高齢者介護事業と比較されて論じられますが、介護事業と比べるとサポートは手厚く、サービス単価も高額になっています。
今後も、この傾向は変わらないように思われます。
②事業所の数そのものが少ない
一部例外はありますが、潜在的な利用者と比べ、事業所の数そのものが不足しています。
したがって、開所と共に問い合わせが入り、早期に立ち上がります。
③指定事業による過当競争の排除
指定事業であるため、自治体により総量がコントロールされています。
したがって、事業者間で競争が少なく、また国が定めた単価で運営するため値下げ競争も起こり得ません。
上記①②③も踏まえ、社会の課題解決による地域貢献と、安定収益が見込める事業です。
「福祉は儲からない」との印象があり、参入に二の足を踏む事業者もありますが、最近はこの分野でも上場企業がでてきており、社会貢献と安定収益が両立できる業界と注目を集めています。
障害福祉事業参入のリスク
①国の政策の影響を受ける
事業所指定の基準やサービスの内容、サービスの単価などは、継続的に国が見直しをかけます。
見直しにより、単価が下げられ売上が減少したり、資格者の増員を求められ固定費が膨らんだり、このようなリスクはゼロではありません。
また違反があった場合、最悪指定の取り消しを受け、事業存続が困難になることも。
良いも悪いも、国や自治体にコントロールされているとも言えます。
②人の問題に悩む
資格者も含め、事業所に配置すべき人数が決められているため、基準を下回る欠員が出た場合、早急に補充が必要になり、充足できない場合はペナルティを受けます。
採用や退職と、常に人の問題と向き合いながら行うサービスです。
③運転資金の多さ、資金繰りの問題
売上がたち、行政から入金があるのにタイムラグ(2~3ヶ月)が発生するため、その間の運転資金をプールしておく必要があります。
また必要人数が定められているため、売上に関係なく人件費がかかり、経費コントロールすることが難しくなっています。
障害福祉の分野のフランチャイズ企業
①ディーキャリア(就労移行支援)
運営企業:ハッピーテラス株式会社
就労移行支援のディーキャリアは、現在、全国で42事業所を開設。
障がいのある方に対し、働くうえで必要な技術や知識の習得と、障害特性による苦手への対策・対処法を身につけ、就職先で活躍し続けられる人材になるためのサポートをしています。さらに一人ひとりの「長所や得意」を見極め、伸ばしていくことを目指します。
ディーキャリア最大の特徴は成果。
同社は成果を就職後の定着率と就職先での給与で捉えていますが、ディーキャリアの定着率(1年間)は97.2%(業界平均の1.97倍)、平均給与19.8万円(業界平均の1.58倍)と高い実績を誇っています。
②わおん(障がい者グループホーム)
運営企業:株式会社アニスピホールディングス
入浴や食事などの介護や生活相談、その他の日常生活上の支援を受けながら、障がいのある方が共同で生活を行う障がい者グループホーム「わおん」は、全国で200拠点を運営しています。
基本的には、空き家(民家)を事業所用に改築、8名程度の方が共同生活を行います。
わおんの特徴は、保護犬や保護猫と一緒に暮らす事業モデルと、必要なサポートを選択できるフランチャイズモデル(レベニューシェア)。
レベニューシェアにより初期投資金額が抑えられているため、多くの事業所が異業種より参入しているようです。
③コペルプラス(児童発達支援)
運営企業:株式会社コペル
障がいのある未就学児童に対し、コミュニケーションスキルや創造性開発を行うコペルプラスは全国で150教室を運営しています。
コペルプラス最大の特徴は、一人ひとりの特性に応じて個別レッスンで提供されるプログラム。オリジナルの教材数は2000を数え、利用者より高い評価と、教育成果を得ています。
もうひとつの特徴は、本部が加盟企業に代わって運営を委託するフランチャイズモデル。この事業の参入リスクである人や資金繰りの問題を気にすることなく取り組めるため、わずか3年で業界最大手にまで事業を拡大成長させることができました。
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