社会福祉連携推進法人(仮称) 厚労省が制度創設提案を具体化
厚生労働省は、社会福祉法人を中核とする非営利連携法人「社会福祉連携推進法人(仮称)」制度創設を、10月29日に開催された社会福祉法人の事業展開等に関する検討会に提案しました。社会福祉法人の自主性を確保しつつ、連携強化できる新たな選択肢として、人材確保・育成や設備等購入の共同実施、参加法人への資金貸付など具体的な活動イメージを提示。経営基盤強化に向けた連携を促進するための新たな制度が提案され、具体的イメージも示されました。
社会福祉連携推進法人のねらい
連携法人が担う業務は「地域共生社会実現に向けた連携」「災害対応に係る連携」「福祉人材確保・育成」「生産性向上のための共同購入など社会福祉事業の経営に係る支援」「社会福祉法人への貸付」の5つです。これまで社会福祉法人間の連携方策は、社会福祉協議会や法人間の緩やかな連携や合併、事業譲渡しかありませんでしたが、社会福祉連携推進法人の創設により、社会福祉法人それぞれの自主性を確保しつつ、良質な福祉サービスの提供と法人の経営基盤の強化に向けた連携を促進することが期待されています。
具体的な内容
- 連携法人は社会福祉法人や自治体、医療・公益・NPO法人なども参加が可能。連携法人内で資金の融通を可能とする。
- 資金の融通は連携法人を介して行い、その内容については所轄庁が認定する。社会福祉法人が収益の法人外支出が禁止されていることを踏まえ、限定的に認める仕組みをつくる。
- 社会福祉法人が貸し付けできる額を本部経費(各事業の収益のうち法人本部に充てられる額)の範囲内とし、集まった資金は他の資金と分けて管理し、貸し付け以外の使用を禁止する。
- 貸し付けを受ける社会福祉法人は、自法人への貸し付けについて議決権はなく、重要事項を決める際は連携法人の承認を必要とする。
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社会福祉法人への資金の貸付等業務イメージ
業務:社会福祉法人への資金の貸付
※社会福祉法人の事業展開等に関する 検討会(第4回)資料をもとに筆者が作図
(※)地域医療連携推進法人においても、連携法人が社員(参加法人)への貸付を行う仕組みとなっている。
社会福祉連携推進法人のメリット・デメリット
新しい取り組みを実施するにあたり、メリットだけでなくデメリットも発生します。「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会(第2回)」では、地域医療連携推進法人の概要等をもとに、次のような例をあげています。
<メリット>
ヒト 人材:後継者問題への対応 • キャリアパスの構築 • 研修・マニュアル等の共有 等
モノ 資源:機能分担と集約 • 紹介・逆紹介 • 共同購入・共同利用 等
カネ 資金:財務安定 • 投資による拡大 • 報酬改定等政策リスクの対応 等
<デメリット>
経営判断の遅延 – 地域・施設ごとの取り組みの阻害 等
実施時期は未定だが、早急に審議される可能性もあり得る
社会福祉連携推進法人の法人格は一般社団法人となり、法改正も必要となるため、厚生労働省は「現時点で実施時期は未定」としているものの、税制の問題を財務省と相談するなど具体的な動きも見られ始めています。全国的に閉鎖に追い込まれる社会福祉法人も見られていることから、早急に審議される可能性もあり得るでしょう。今後の成り行きが注目されます。
出典:
社会福祉法人の事業展開等に関する 検討会(第2回)資料
社会福祉法人における連携・統合について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000508519.pdf
社会福祉法人の事業展開等に関する 検討会(第4回)資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000561192.pdf