介護保険を受ける際の流れや入り口について MSW が解説

様々な介護サービスを利用するにあたり、ご家族やご本人が必要とするのが介護保険であり、そしてこの介護保険を基に各介護事業者は介護報酬を受け取ることになるわけです。

しかしこの介護保険を利用するための条件やその入り口というのはあまり大々的には公表されておらず、その内容についてご存知でないという方も大変多いのが実情です。というより、ご家族様でこのあたりに明るい方は、介護業界の人くらいかもしれません。

そこで今回は、ご家族から質問を受けた際にすぐに説明して差し上げられるように、介護保険を受ける際の流れや入り口について、メディカルソーシャルワーカーである筆者が解説していきます。こちらの記事を介護職員の方にお見せするなど、ご活用ください。

 

介護保険は民生委員やケアマネージャー社労士などでも代行申請可能

介護保険を利用するための入り口は、本人もしくは家族が申請を希望し、市町村役場にて申請書に記載することから始まります。場合によっては民生委員や社会保険労務士や居宅介護支援事業所に所属するケアマネなどが、代行して申請することも可能です。

基本的に介護保険を申請できるのは65歳以上(第1号被保険者)ですが、脳血管疾患やALS、がん(末期に限られる)など16の疾病(特定疾病)に該当する40歳~64歳(第2号被保険者)も申請が可能です。

介護保険法では申請より30日以内に本人に要介護度を通知することになっています。

(※大都市では大幅に30日を超えてしまってトラブルになるケースもあるようですが、トラブルに関しては、今回のテーマからそれるので割愛します)

申請を受理されてからの流れですが、2つのことが同時進行で実施されています。

 

主治医意見書

本人の主治医から本人の医学的見地からの意見書を記載してもらいます。
(この意見書が非常に困りもので、熱心な主治医は記載項目に沿って聞き取り記載してくれるのですが、大抵の医師は「ある意味適当」に書いてしまう傾向が多いです。次に述べる認定調査の結果との大きな乖離ができてしまう可能性が強いのです。)

 

認定調査

認定調査員(認定調査の研修を受けた者)が、自宅もしくは入院中なら病院に出向き74項目の調査項目を本人及び家族から聞き取りをします。(入院中の場合は病棟担当者にも聞き取りを行うこともある。)

聞き取りの項目は麻痺、拘縮、身体機能、日常の生活動作(例)歩ける、移乗動作、排泄行為、短期記憶、精神・周辺症状、社会的適応、医療行為などを聞き取ります。聞き取り後、聞き取り項目の補足の意味で特記事項を記載し、認定調査は終了になります。

この時認定調査を受ける方、つまりご高齢のご本人様が「外部からお客様が来た」というようなことで自宅であればお茶出しをしてみたり、普段やりつけないことをしてみたりなど、急に張り切ってしまうことがあります。

こちらは認定調査員がこの方はこういったお茶出しなどの行動がスムーズに行える、とそのまま額面通りに評価してしまうことにつながりますので、あまりご本人に何でもすることができる、など、普段の実態にそぐわないようなことを言われてしまわないよう家族は注意をする必要があります。

またご家族については普段の状況をありのままにお話しし、普段やりつけないことをしている場合には調査員の方が来ていてこういった行動に出ているのだと思います、と普段はその行動をとることができない状況であるということを伝えるようにするなどの対応が必要となります。

 

一次判定を参考に介護認定が最終決定

主治医意見書、認定調査、特記事項をコンピューターに入力すると、一次判定が判定されます。

それを基に介護認定審査会(医師・介護支援専門員・薬剤師・介護福祉士・社会福祉士などの合議体)が開かれ、一次判定を参考に最終的な要介護度が認定されるのです。

認定日はその翌日となり、当日に介護保険被保険者証が郵送されます。

介護度は非該当・要支援1・2、要介護1~5の7段階に分けられます。

ここまでが介護保険申請の大まかな流れです。ここからは、非該当以外の認定者がサービス利用を希望すると、要支援1・2の認定者は申請者が居住する圏域の地域包括支援センターが担当になり、サービスを調整していくことになります。(原則地域包括で担当するが、居宅介護支援事業所に委託も可能です)

要介護1~5に認定された申請者は、希望する居宅介護支援事業所を決め担当のケアマネと一緒にサービスを検討していくことになります。

担当ケアマネは本人及び家族から聞き取り調査を行います。(インテーク・アセスメント(課題分析)。ここでの聞き取りは認定調査とは別物です。)

それによって本人が何ができて、できないかを把握し、本人が在宅生活でどこが困るかを確認し、利用者本位に照らし合わせ社会診断を行います。

本人及び家族から何のサービス利用が希望か確認しながら進める(この際、どのようなサービスがあるのかを本人たちが把握していない場合は、サービスの内容も説明しながら話を進めていくことになります。)ことになります。

それを基に居宅サービス計画(案)(以下ケアプラン)を作成し、希望するサービス事業所などを含めサービス担当者会議を開催し、正式なケアプランを作成し、本人に確認を取ってからサービス開始となります。

なお、これは通常の流れであり、場合によっては順番が前後することもあります。

実際その方が多いです。順番通りに行っていたらサービス利用希望した日から大幅にサービス利用日が遅れてしまうことも多く、ここはケアマネの経験と判断が重要です。

その後は、毎月1回は自宅に訪問し、サービスの利用状況などを確認しながらモニタリングを行い、修正することがあればケアプラン変更など、初回からサービス利用に至る流れを繰り返しサービス調整を行います。

なお、介護度は有効期間があり、更新する必要があり、その時期になると冒頭で記載したように再度主治医意見書や認定調査が必要になってくるのです。

また、介護保険は平成12年から施行された、五番目の社会保険です。

他の社会保険は医療保険・年金保険・労災保険・雇用保険であり、40歳未満は介護保険以外の給与所得者は給与から差し引きされます。(労災に関しては、個人負担はなく事業主が全額負担しています。)40歳になった段階で介護保険も徴収されることになっています。

 

 

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