認知症姑の被害妄想に苦しんだお嫁さんを救い出す
ー被害妄想はなぜ出現してしまうのか?
認知症の方の行動心理症状の中に被害妄想というものがあります。
物盗られ妄想などもこの被害妄想の一種となるわけですが、これはなぜ出現してしまうのでしょうか。
そして在宅の状態でこういった被害妄想が出現していると、割合としては施設の入居後もこういった症状が続いていくということが多く見られるものです。
その背景には様々な要因があると思います。被害妄想は認知症の行動・心理症状(BPSD)であり、必ずしも認知症の全員に出現されるものではありません。
家庭では介護者は懸命に介護していると思うのですが、どうしても憔悴しきった顔で世話をしたりして、いうことを聞いてくれなくてつい「面倒をみてやっているのに…!」と
威圧的な態度を取ってしまうことがあると思えます。
気持ちはわかります。四六時中介護して休まる暇がないのですから。しかし、このままの状態でも状況は変わらないのです。
すると、認知症の人は、いよいよ耐え切れなくなり、「依存される側、依存する側」という関係を崩そうとし始めるのです。
今回は筆者がケアマネ時代に、こういった被害妄想やご家族との関係性についてとても考えさせられた事例かつ、適切なアセスメントと連携でご家族を少しでも負担軽減して差し上げることができた事例について、ご本人や事例が特定できないような形で加筆修正した上でご紹介していきます。
Cさん 70代 女性 アルツハイマー型認知症
主たる介護者:嫁
ケアマネである私がアセスメントのためにCさんのところへ初回訪問した際、ケアマネである私にはニコニコ笑顔ではなしてくれるのですが、ことお嫁さんの話になると、「何も食べさせてくれない」「お金が盗まれた」「自分こそが、迷惑をかけられているんだ」と認識をすり替えている状況でした。
お嫁さんの表情は疲弊し、涙ぐんでいました。
このままではよい介護関係の構築は難しいと判断するに至った私は、まずは2人を少し距離を置く時間が必要と判断し、短期入所の(ショートステイ)を活用しまずは2週間様子をみることにしました。
そして私はその2週間の間に自宅を数回、施設をほぼ毎日訪問しました。
何度かご自宅を訪問してお嫁さんとお話をさせていただいたり、またどのような状況での介護が続いていたのかお話を聞かせて下さい、とお願いしてエピソードや様々なご苦労されている点などについてヒアリングを徹底的に行いました。
これは状況の評価やアセスメントのためでもあるのですが、それと同時にお話を聞く、つまり傾聴することによってCさんのお嫁さんの負担の軽減や、心理的な解放を目的としたものでもありました。
このお嫁さんへの日参によって徐々にお嫁さんと信頼関係を構築するに至り、
お嫁さんは徐々に笑顔がみられるようになり、「私も言いすぎることがあるんです」「身内だから余計に腹がたってしまう」「他の身内は私に任せっきりでだれも理解してくれない」ととめどなく、このような話が聞かれました。
今まで様々な抑圧からおっしゃることもできなかったでしょうし、またこのような話をできる相手もいらっしゃらなかったのでしょう。
そう考えた私はその度に、ねぎらいの言葉をかけていました。
そして今後、どのようにしていきたいのかを検討することとしました。
お嫁さんとしてはできるだけ在宅で介護したいとの意思があり、それを尊重し、本人・お嫁さんにとってのサービス支援を計画することとしました。
一方Cさんは、施設でも嫁の悪口を当初は訴えていたようですが、しだいにその妄想は施設スタッフにすりかわってしまっていたようです。
ここは重要なポイントでした。
お嫁さんという特定の人の悪口を言い続けるのではなく、近くにその都度いる人間の悪口を言うことで、お嫁さんという特定の人の悪口が、まるですり替わってしまったかのように消えてしまうということです。
そのため妄想はお嫁さんだけに発生する問題ではなく、誰もが対象であることが理解できました。
そこからこの被害妄想をどのように対処していくかが在宅生活を続けていく上で重要になってくると判断しました。
ではどのように計画すればよいか?
なかなか困難を極めました。ただひとつ気づいたのが私には嫁の悪口は相変わらずでしたが、被害妄想はなかったのです。
「私」を利用することに
そのため「私」を利用することを思いつきました。
ケアマネである私から、お嫁さんは何もしてないですよ、の一言で「そうかい?私も少し悪いと思ってたのよ」との発言も聞かれ、お嫁さんに報告したところびっくりしていました。
最終的にサービスは短期入所を月2週間、認知症専門のデイサービスをサービスとして加え、私、お嫁さんを含め、情報共有することにしました。
そして短期入所以外の在宅で、妄想がでたらすぐにお嫁さんから連絡をもらい、私がCさんと話すことにより「あ、そうだったね」と話し、お嫁さんの話ではその後妄想的な言動がなくなったとの報告をもらいました。
そのためショートステイやデイサービスの職員が妄想を話すときには否定せず聞き入れ、自宅での妄想をできる限り排除できるようにしました。
その後ほぼ妄想はお嫁さんに対してなくなりました。お嫁さんは「これからも介護を頑張っていけそうです」と明るい表情でした。
ショートステイやデイサービスなどの社会資源につなげることも大切ですが、私も社会資源と捉え支援した結果、スムーズに移行できたことが今回につながったのだと思いました。
行動心理症状のある高齢者は徘徊や捜索が発生するリスクも考慮に
今回ご紹介したケースでは、行動心理症状の中の被害妄想という部分が出ていましたが、これが不安症状などの症状が発現した場合、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅、高齢者介護施設などの入所者さんの場合は徘徊などが発生したり失踪することも十分に考えなくてはなりません。
こういった事態が起きてしまった場合にはまず、大至急入居者様を捜索せねばなりませんし、早急に確保をせねばなりません。
各施設とも様々な工夫をされているかと思いますが、それでもその対策は100%万全で、十分だと言えるでしょうか?
こういった入居者の捜索や徘徊失踪対策についてはやりすぎということはありません。
今回、早急に失踪や徘徊を行っている入居者の方を発見し、安全に確保するために「入居者捜索マニュアル」を編集チームでは作成いたしました。
各施設によってその状況が異なるかと思いますが、こちらは元に参考にしていただければ幸いです。
こちらのマニュアルについてはお時間取らせることなく、今すぐお手元にダウンロードしていただくことが可能です。
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明日からでも施設でご利用いただくことができますので、まずはこちらのページから受け取りにお進みください。