「地域共生社会推進検討会」中間とりまとめ(2)

参加支援(社会とのつながりや参加の支援)について

昨今は社会的孤立など、関係性の貧困が課題であることが多いため、本人・世帯と地域との接点をどのように確保するかが重要です。そのためには断らない相談支援と一体的かつ縦割りを克服した多様な参加支援が求められています。

参加支援に当たっては、本人・世帯と地域とのつながりや関係性の構築を中心に考え、就労支援であれば、地域の中小企業など、地域や参加の機会を作る主体への支援も行う必要があります。参加支援として求められる具体的な支援メニューとして次のような意見が挙がりました。

  • 断らない相談支援で受け止めた課題を整理し、次なるアクションにつながるまでの期間、本人との関わりを続けながら一時的な生活保障を行う。
  • 障害者だけでなく、働きたい高齢者や不安定雇用等の若者も利用できる弾力的な就労支援サービスや就労機会等多様な仕事づくり。
  • 血縁の脆弱化を考えると、居住支援や就労支援に際して一定程度公的な身元保証の仕組みが求められる。
  • 介護や子育て、障害者支援、就労支援、身元保証等の日常的な関わりが「かかりつけ」となれば、生活課題の深刻化を防ぐことにもなる。
  • 孤立した状態から社会参加ができるようになるまでには多くの隔たりがあるため、本人の生きがい・やりがいになる活動ができる場の提供が必要である。

 

参加支援を構築していく際の留意点

  • 各種制度のサービスにおいて、利用者の範囲、既存資源の活用等を行えることが必要であり効果的である。
  • 柔軟に本人・世帯のニーズに合わせた参加支援を行うことができるかが重要である。
  • 地域全体でかつ公民協働で参加支援を作っていく当事者意識と仕組みの構築が求められる。

 

地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援など地域づくりについて

(1)今後の地域づくりの在り方について

住民が抱える困難は地域における暮らしの中で生まれており、支え合う関係性の成立により、断らない相談支援や参加支援が有効に機能します。また、参加する個々の住民の意欲や関心に基づく取組を進めることで、住民が地域づくりの主体となる動きも見られます。しかし政策の立案と実施の段階で丁寧な対応を欠くと、十分な成果をあげることが難しくお仕着せになってしまう可能性もあります。

既存の地域のつながりや支え合う関係性が存在する場合において、それを十分に把握しないまま、政策的に新たなつながりを生み出そうとすると、既にある住民の自発的な取組を損なう場合があります。これらを踏まえ、地域住民の主体性を中心に置き、地域のつながりの中で提供されている支え合う関係性を尊重するという姿勢が不可欠です。

地域のつながりが弱い場合は、行政からつなぎ直しのための支援、都市部などで地域のつながりが弱い場合は、新たなつながりを生み出すための支援を行うといったように、地域の状況に合わせて細かな対応を行います。地域の持続可能性への視点を持つとともに、まちづくり・地域産業など他の分野との連携・協働を強化することが必要と言えます。

 

(2)地域住民同士のケア・支え合う関係性(福祉分野の地域づくり)

福祉の観点をきっかけとする地域づくりの実践から地域づくりを進めていく上で、世代や属性にかかわらず、次の機能の確保が必要です。

  • ケア・支え合う関係性を広げつなげていく、全世代対応のコーディネート機能。
  • 住民同士が出会うことのできる場、気にかけ合う関係性をつくるための居場所の機能。

 

コーディネート機能については主に以下の①から④までの役割があると考えられます。

①既存の社会資源の把握と活性化

②新たな社会資源の開発

③住民・社会資源・行政間のネットワークの構築(連携体制の構築、情報の共有)

④地域における顔の見える関係性の中での共感や気付きに基づく、人と人、人と社会資源のつなぎ

 

(3)多様な担い手の参画による地域共生に資する地域活動の促進

近年、他の政策領域においても、地域やコミュニティの多様な活動に対する支援の在り方や、新たな公・共・私の役割分担の在り方を模索する試みが見られます。地域住民同士のケア・支え合う関係性を地域において広げていく際も、地域の企業や産業など経済分野、教育分野など他の分野と連携することで、一人ひとりの暮らしを地域全体の視点から捉えることが可能となり、社会とのつながりや参加に向けた多様な支援を展開することが期待できます。

分野ごとの支援につながる政策を強化していくとともに、福祉、地方創生、まちづくり、住宅施策、地域自治、環境保全などの領域 の関係者が相互の接点を広げ、地域を構成する多様な主体が出会い、学びあう ことのできる「プラットフォーム」を構築することが必要です。特に若い世代にとっては、地域やコミュニティに関わる入口が多様であることが望ましいため、「プラットフォーム」は単一のものではなく、複数存在することのできるモデルとすることが求められます。「プラットフォーム」における気付きを契機として、複数分野の関係者が協働しながら地域づくりに向けた活動を展開するための支援方策についても検討すべきです。

 

包括的な支援体制の整備促進の在り方

モデル事業においては、柔軟性や余白のある事業設計とすることで、支援関係者の問題意識、自治体の規模やこれまでの取組、地域資源の状況等に合わせ、それぞれの創意工夫の下、相談機能窓口や多機関協働の連携 における中核機能の配置を行う。

包括的な支援体制の構築においては、自治体内で分野横断的な議論を行い、試行錯誤を重ねることができるプロセスの柔軟性が重要である。新たな制度の創設を検討する場合にも、それが可能な制度設計を目指し、自治体の裁量の幅を確保できるようにすべきである。また、支援対象者が市町村域を超えて居住地を転々とするなど、市町村域を超えた調整等が必要な場合や、専門的な機能について小規模市町村では個々に確保することが難しい場合もある際は、次のような対応を行う。

 

  • 基礎自治体である市町村を中心とした包括的な支援体制の構築を進める 一方、都道府県が市町村における体制づくりを支援する。
  • 市町村の体制から漏れてしまう相談を受け止めて、もう一度市町村につなぎ戻す。
  • 市町村域を超える広域での調整や必要に応じた助言。
  • 人材育成等に当たること など、都道府県の役割の具体化を図る。

 

支援につながる力の極端に弱い人たちや平日日中に相談窓口に来られない人たち等の存在も考慮し、都道府県域を超えるより広域での支援体制の検討や、SNS など様々なツールを活用した支援への多様なアクセス手段の確保についても、引き続き取り組む必要があります。

重層的な支援体制を構築するに当たり、本人や世帯に対する包括的な支援を実効性のあるものとするために、福祉以外の医療、住宅、司法、教育などの支援関係者においても本人や世帯に寄り添い伴走する意識を持って支援が行われることが必要です。また、国による財政支援についても、包括的な支援体制の構築を後押しする観点から次の点に留意します。

  • 地域の多様なニーズに合わせて、分野・属性横断的に一体的・柔軟に活用する。
  • 煩雑な事務処理を行うことなく支援を提供できるなど、一人ひとりのニーズや地域の個別性に基づいて、柔軟かつ円滑に支援が 提供できるような仕組みを検討する。

自治体における事業の実施の支障とならないよう留意しつつ、経費の性格の維持など国による財政保障の在り方にも十分配慮して今後検討を進めることが必要です。

 

今後の検討に向けて

今後、本検討会において、更なる議論を重ねながら政策の具体化を検討してきます。今回の議論を通じて、今一度、一人ひとりが生まれながらにして持つ権利と存在そのものへの承認を中心に据えた福祉政策の在り方について、道筋を立てることが必要です。今後の検討にあたっても、常にこの点に立ち戻りながら議論を進めていく考えです。

 

出典: 地域共生社会推進検討会中間とりまとめ

https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000529726.pdf

 

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