介護業界の人事部が欲しい資格・要らない資格
日本で取得できる資格は、国家資格、公的資格、民間資格、任用資格の4つに分けることができます。資格講座案内を見ると、「就職に有利」や「独立開業も可能」などと謳われていますが、実際には必要でない資格も多数あります。そこで採用的立場から介護福祉関連の資格について、必要性や有用性を考察しました。なお、高齢者施設における重要度は、制度や筆者の経験をもとに☆で表しましたので、参考にしてください。
国家資格
知識や技術が一定水準以上であることを国によって認定された資格です。法律によって一定の社会的地位が保証されることにより、社会的信頼度が高くなります。介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士は福祉三大資格と呼ばれていますが、いずれも、有資格者でなければ業務ができない「業務独占資格」ではなく、その資格名を名乗れる「名称独占資格」にとどまっています。
・介護福祉士(☆☆☆☆☆)
高齢者施設に配置義務がある必要性の高い資格です。時々「介護は家庭でもできるので専門性が低い」という声を聞きますが、介護福祉士は実務試験が課せられているため、知識だけでなく技術も担保されています。介護職員全員が有資格者である必要はありませんが、質の高い介護を提供するためには、基準以上を確保すべきです。
・社会福祉士(☆☆☆★★)
高齢者施設において利用者や家族の相談援助を担います。配置を義務付けられているのは「地域包括支援センター」のみで、高齢者施設の採用人数も少ないため過剰供給気味です。実技試験はなく、ペーパー試験のみで取得できるため、有資格者であるからといって技術が担保されているとは限りません。資格の保持はもちろんのこと人物やキャリアを重視して採用しましょう。
・精神保健福祉士(☆☆★★★)
社会福祉士が福祉全般を対象としているのに対し、精神保健福祉士は精神科領域に特化しているため、高齢者施設では精神病院やそれを母体とする老人保健施設に採用される傾向があります。従って特別養護老人ホームや有料老人ホームなどでは、精神保健福祉士よりも社会福祉士の有用性が高いといえます。
公的資格
都道府県などの公的機関が実施する資格です。介護支援専門員などのように配置が義務づけられるなど、国家資格と同様に重要な資格も存在しています。
・介護支援専門員(☆☆☆☆☆)
介護保険施設には配置義務がある重要な資格です。「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格後、「介護支援専門員実務研修」を受講。レポートの提出によってはじめて登録される厳しいプロセスと、5年ごとに研修を受けて更新されるというフォローアップ体制が取られています。採用人数は配置基準どおりではなく、業務内容によって増員したいものです。
・介護職員初任者研修(☆☆☆☆★)
旧ヘルパー2級に相当する試験です。講義と実技実習により介護の基本を学びます。業務内容としては介護福祉士と変わりませんので有用性が高い資格といえます。ただし資格手当などで介護福祉士と格差があると不満の要因になりかねません。将来的に介護福祉士の取得を目標とするなど、採用にはキャリアパスを示す必要があります。
以下の公的資格は、高齢者施設で勤務するにあたり必ずしも必要ではありません。採用の際には「特技」というレベルで考えてください。
・手話通訳士 点字技能検定(☆★★★★)
高齢者施設にも視覚障害や言語障害の方はいますが、多くは加齢によるもののため、手話や点字が通じることはほとんどありません。したがってこれらの関連の資格が業務に活かされる場面は少ないでしょう。
・福祉用具専門相談員(☆☆★★★)
介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所に配置義務があります。高齢者施設が福祉用具を購入する場合、業者を通して購入するので有資格者は必要ではありません。
・福祉住環境コーディネーター(☆☆★★★)
福祉と建設関係の知識を必要とする資格です。住宅改修や在宅系などの事業所においては「知識」として活用することはできますが、高齢者施設において活躍の場は限られます。
民間資格
民間団体や個人等が自由に設定できる資格で、業界内で一定の技術が担保されていることを認定する資格から、実用性よりも知識を誇示するものまで様々です。
・サービス介助士(☆★★★★)
交通機関、販売、飲食・宿泊業などのサービス業が、サービスの付加価値として簡単な介助を学ぶ資格です。本来の生業に対する付帯ですので、専門職としての資格ではありません。事務職員が取得していれば採用に加味する程度のものと考えます。
・医療福祉環境アドバイザー(☆★★★★)
感染予防とメンタルケアに特化した資格です。医療福祉環境アドバイザー試験、医療福祉環境シニアアドバイザー試験の2つがあります。高齢者施設において感染症対策は必要ですが、この資格だけでは不十分なため、看護師や介護福祉士も合わせて取得していなければなりません。
・介護予防運動スペシャリスト(☆★★★★)
リハビリテーションではなく、介護予防に特化した「運動」の指導をする資格です。介護予防運動スペシャリストと上級介護予防運動スペシャリストの2つがありますが、どちらも講習とレポートの提出で簡単に取得できます。やはりこの資格だけでは不十分なため、看護師や介護福祉士も合わせて取得していなければ意味をなしません。
その他にも、福祉力検定、福祉ロボット検定など様々な民間資格がありますが、それだけでは知識不足・技術不足のため、国家資格と合わせて保持する必要があります。よほどのことがない限り、採用にプラスする必要はないでしょう。
任用資格
・社会福祉主事(☆☆☆☆★)
市町村などの福祉事務所や役所で、社会福祉主事に任用される際に必要な資格です。社会福祉士が制定される前から存在し、相談援助の基本的資格だったため、現在も高齢者施設相談員の資格要件のひとつとされています。差別化を図るため、社会福祉士よりも資格手当を低く設定している施設が多いようです。
まとめますと、高齢者施設において「欲しい資格」は介護職においては介護福祉士と介護職員初任者研修、相談援助職においては介護支援専門員、社会福祉士、社会福祉主事、その他の資格は「特技」の範疇となります。むかしは「福祉は心」といわれていましたが、プロである以上、それを示す資格は重視しなければなりません。「全員が有資格者」という状況を作っていかなければ、介護福祉業界の地位向上は難しいでしょうね。
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