認知症カフェの効果と国の功罪
近年、認知症カフェの開設が増えています。閉じこもりがちな認知症高齢者の外出先や、認知症の高齢者の家族の交流の場として活用されています。全国に広がりを見せる認知症カフェの概要や課題を紹介します。
認知症カフェとは
ヨーロッパではじまった、お茶を飲みながら落ち着いた雰囲気の中で、認知症やその家族を支援することを目的とした場所(カフェ)です。日本では厚生労働省が実施する認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)において「認知症の人やその家族等に対する支援として認知症カフェの普及などにより、認知症の人やその家族等に対する支援を推進する」と言及。2015年ごろから全国に広がりを見せました。なお、「認知症」と言うネーミングを嫌って、「オレンジカフェ」、「Dカフェ」などと呼ばれることもあります。
認知症カフェの目的
時間に縛られないレクリェーションの参加や、気軽に認知症について相談できる場所として活用されています。認知症上の出現は本人や家族をとても戸惑わせるもの。気持ちを切り替えられるまでは、すぐに相談機関に話ができるものではありません。認知症カフェには、そうした方々が集い、お茶やお菓子を楽しみながら、リラックスした気持ちで語らうことで、問題解決に向けてステップを踏み出していく役割があります。 「カフェ」と名付けられていますが、ほとんどが店舗で運営するのではなく、介護施設や医療機関の喫茶コーナーや食堂、地域交流スペースなどを利用することが多く、談話を中心に、介護相談、講和、学習会、イベントなどを月1~2回、有料(50~300円)または無料で開催しています。またスターバックスでは、高齢化する街への社会貢献として出前認知症カフェ「Dカフェ」を開催。都内8店舗が月一回、悩みの共有場所となり、市民の参加を促し、認知症の人たちの外出機会を増やしているようです。
認知症カフェ補助金・助成金申請について
認知症カフェの需要が増加する中、厚生労働省では基準を満たし書類を提出した事業所に対し、各都道府県や市町村で補助金や助成金を受け取れる仕組みを作りました。ただし市町村で支給額が異なり、予算額に達成すれば終了となります。また補助金や助成を実施していない自治体もあります。認知症カフェ運営補助金について、埼玉県加須市を例に詳細について紹介します。
補助対象となる団体
- 加須市内に所在する団体であること。
- 定款、規約、会則等を有していること。
- 宗教活動又は政治活動を主な目的とするものでないこと。
- 加須市暴力団排除条例(平成24年加須市条例第51号)第2条に規定する暴力団又は暴力団員が関係するものでないこと。
- 認知症カフェの適切な運営を確保できると市長が認めるものであること。
活動内容
項目 | 基準 |
活動拠点 | 市内に概ね10人以上の活動ができる拠点を設けること。 |
開設回数等 | 年2回以上開設するものとし、1回当たりの開設時間は90分以上とすること。 |
人員配置基準 | 医師、保健師、看護師、社会福祉士、介護福祉士、認知症介護に係る公的研修修了者、介護初任者研修修了者又は介護経験者のいずれか2人以上を常時配置すること。 |
基本的な考え方 |
|
活動内容 |
|
記録等 | 参加者の人数、構成、活動内容等について記録すること。 |
平成30年度補助金額
1団体あたり年額12万円(開催1回あたり2万円)上限 (注)交付予定団体数が予算の範囲を超えた場合は、交付額が限度額に満たない場合があります。
認知症カフェの課題
上記の補助金を実施しる市町村は一部にすぎません。ほとんどの事業所が社会貢献としてボランティアのような形で運営しています。認知症カフェの需要はあるものの、財源の裏付けも収益性もないため、持続していくことが難しい。補助金があったとしても人件費や光熱費などを除くと、維持できる額ではありません。
認知症カフェは一部の奇特な人たちによって支えられている現状があります。「地域に認知症の方がその人らしく生きる」という大きなテーマを、無償の労働に頼らざるを得ない国の政策が、大きな課題と言えるでしょう。認知症カフェを継続させるためには、「アイデアは出すが、金は出さない」という仕組みを変えていく必要がありますね。
関連記事